⑩ 会社勤めでの定年後のライフプランは?

先のことと思っていた定年も、50歳を過ぎるとだんだん現実味を帯びてくるようになります。年金も支給されるようになるし、健康だから定年後も働き続けたいと思っていても、そこには思いもよらぬことがあるかもしれません。

従業員の管理をしている人事総務担当者としては、従業員が定年を迎えるに当たって、法制度・社会保険の現状・定年の際に必要な手続きなどを説明する必要があるのではないでしょうか。

このような説明会を実施することによって、従業員に就業機会、気持ちの準備、現状の理解を促す効果もございます。また事前に行うことで定年までの十分な時間も確保することが出来、従業員側も事前準備・対応することが出来るようになります。

定年前に知っておきたい内容の一部をご紹介します。

1. 定年とは・・・
2. 国の施策
3. 定年後の待遇は
4. 公的年金制度について
5. 雇用保険とは
6. 健康保険について
7. 住民税・退職金に関する基礎知識

 

1. 定年とは・・・

定年とは、定年の年齢を企業が60歳と定め、満60歳になった際に雇用契約を自動で終了させる制度のことです。

高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)第8条

事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、定年は60歳を下回ることが出来ない。

 

 

2. 国の施策・その1

就業規則等で従業員の定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上とする必要があります(高年齢者雇用安定法第8条)。定年年齢を65歳未満に定めている企業は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、

①「65歳までの定年の引上げ」
②「65歳までの継続雇用制度の導入」
③「定年の廃止」

のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要があります(高年齢者雇用安定法第9条)。

②「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。この制度の対象者は、以前は労使協定で定めた基準によって限定することが認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、2013(平成25)年度以降、希望者全員を対象とすることが必要となっています。

 

背景

日本では長く、60歳が定年年齢とされてきました。しかし戦後平均寿命が格段に延び、60歳がまだ働き盛りの年齢となってきたことや、それによる生活上の経済的必要が出てきました。また、厚生年金の支給開始年齢が段階的に65歳に引き上げられることにより、60歳の定年以降年金支給まで無収入になる期間ができるのを防ぐために、2013年4月に改正高年齢者雇用安定法が制定されました。
これにより、希望する従業員全員の雇用を65歳まで確保するため、
①「65歳までの定年の引上げ」
②「65歳までの継続雇用制度の導入」
③「定年の廃止」
のいずれかを、2025年までに実施することが企業に義務づけられました。実質的に従来の60歳定年制から65歳定年制へ移行することとなります。


現状の対応は?

従業員65歳までの雇用確保の状況はどのようになっているのでしょうか?
① 「65歳までの定年の引上げ」
② 「65歳までの継続雇用制度の導入」
③ 「定年の廃止」

※厚生労働省・令和2年「高年齢者の雇用状況」(2020年・令和2年)引用

 

2013年4月に改正高年齢者雇用安定法が制定されました。ほとんどの企業が対応されている現状が見えてきました。前述したとおり、3つの選択肢をとることは、今までの高年齢者雇用安定法でも定められていました。しかし、今回の改正では、継続雇用制度の導入を希望者全員としないという企業の例外措置が撤廃されたため、希望者全員を継続雇用制度の対象にする必要がでてきました。ただし、全員を雇わないといけないわけではありません。つまり、労働者側とお互いの雇用条件が合わなかった場合には、雇用することができなかったとしても法律に違反することにはならないのです。

継続雇用制度で注意すべきポイントは、現役時代と同じ仕事内容や勤務条件が、再雇用後も継続されるとは限らない点です。以前は正社員として雇用されていた場合でも、一度退職した後での雇用となるため、契約社員や嘱託、パートなどのように雇用形態も変わるのが一般的です。給料の減額といったことも起こり得ます。このように再雇用制度を利用して働き続ける場合は、そうした変化を想定して、キャリアプランを考えることが大切です。

 

2. 国の施策・その2

2021年4月からこのように変わります。ただ努力義務なので何もしなかったことで問題になることは今のところありません。

 

背景

2013年の高年齢者雇用安定法の改正によって、65歳までの雇用確保が義務化(実質65歳定年制)されました。経過措置も2025年3月末で終了し、2025年4月からは経過措置もなくなり全企業に実質65歳定年制が適用されます。
その理由の一つとして、厚生年金の支給開始年齢が、2025年の65歳となることが決まっており、働ける期間を65歳までとすることで厚生年金受給のタイミングと同じにして、無収入期間をなくす意図です。

それとは別に、65歳までの雇用確保が義務化の経過措置が完了する前に、2021年4月からは、企業は70歳までの就業機会確保、すなわち「実質70歳定年制」が努力義務となります。

 

日本の公的年金の受給開始年齢は元々55歳でした。それが60歳になり、65歳へと段階的に引き上げられてきました。65歳までの雇用確保の義務化もそもそも努力義務から導入され、時を経て完全導入となっております。このように公的年金と雇用確保とは常に年齢が連動しておりました。そこへもともと公的年金の受給開始年齢のさらなる引き上げを模索していたところへ、今回実質70歳定年制が努力義務として課されることになりました。公的年金の受給開始年齢も引き上げられるのか、と考えるのは詮索しすぎでしょうか。

 

70歳までの就業機会確保(改正高年齢者雇用安定法)の内容

① 「70歳までの定年の引上げ」
② 「70歳までの継続雇用制度の導入」
③ 「定年の廃止」
これに加えて
④ 継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 継続的に次のいずれかの社会貢献事業へ従事できる制度の導入
(1) 事業主が自ら実施する社会貢献事業
(2) 事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業
④及び⑤を創業支援等措置といいますが、これらを導入するに当たっては、創業支援等措置の実施に関する計画を作成した上で、過半数労働組合等の同意を得る必要があります。
④・⑤については、65歳までの雇用確保の義務化にはなかった項目になります。今回新たに導入されました。

途中の内容までご説明いたしました。この内容に興味を持たれたり、このような説明を行おうとお考えの会社がございましたら遠慮なくお問い合わせ下さい。

 






お問い合わせフォーム

*は必須項目です

会社名 *
役職 *
お名前(漢字) *
お名前(フリガナ) *
電話番号(半角) *
E-Mail *
お問い合わせ内容 *