勤怠管理:解雇とは? 2021.08.01
解雇とは?
使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を解雇といいます。一方的な労働契約の終了なので労働者の同意を得る必要はありません。それとは逆に労働者からの事前の申告により雇用契約が終了するケースは退職といいます。
解雇は、使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする(労働契約法第16条)。つまり労働者を解雇することはできません。解雇するには、社会の常識に照らして納得できる理由が必要なのです。
例えば、解雇の理由として、勤務態度に問題がある、業務命令や職務規律に違反するなど労働者側に落ち度がある場合が考えられますが、1回の失敗ですぐに解雇が認められるということはなく、労働者の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性、労働者が悪意や故意でやったのか、やむを得ない事情があるかなど、さまざまな事情が考慮されて、解雇が正当かどうか判断されます。
少なくとも下記に記載されている内容については法律で解雇が禁止されています。
<労働基準法>
業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
<労働組合法>
労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇
<男女雇用機会均等法>
労働者の性別を理由とする解雇
女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇
<育児・介護休業法>
労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇
そのため使用者は、就業規則に合理的な解雇事由を記載しておかなければなりません。そして、合理的な理由があっても、解雇を行う際には少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として、支払う必要があります。例えば、解雇日の10日前に予告した場合は、20日×平均賃金を支払う必要があります。(労働基準法第20条)。
もし、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、会社はすぐに労働者に証明書を交付しなければなりません(労働基準法第22条)。
解雇の種類は?
◆ 懲戒解雇
解雇の中で最も厳しい措置とされるのが懲戒解雇です。窃盗や横領、傷害など、会社の秩序を著しく乱して、大きなダメージを与えた際などに科すことができる制裁罰のひとつです。
懲戒解雇は、労働者に対する制裁という側面があり、労働契約法15条により規定されています。
① 就業規則などに懲戒解雇の根拠規定があること
② 従業員が懲戒解雇に該当する行為をしたこと
③ 懲戒解雇をすることが相当であること
懲戒解雇は、労働者に与える不利益の程度がとても大きく、会社が取り得る手段の中でも最終手段に位置付けられています。
● 解雇予告手当が支払われない(労働基準法20条)
解雇を行う際には少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として、支払う必要があります。しかし、「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」、労働基準監督署長の認定を得れば、解雇予告手当は必要なくなります。
● 退職金が全額支払われないもしくは減額される
就業規則または退職金規程で、懲戒解雇のときには退職金を支払わない、または減額すると定められていることが一般的です。裁判の判例では、退職金を不支給・減額するためには従業員の行為が、長期間の労働の成果を抹消してしまうほどの著しい非違行為があった場合などに限られるため、懲戒解雇だからといって必ずしも退職金を不支給・減額にできるわけではありません。
● 雇用保険の給付制限
失業保険の給付について、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を受けて退職したときは、7日間の待機期間+3か月の給付制限期間を経過しなければ支給を受けられません。
◆ 整理解雇
整理解雇とは、業績悪化した会社が事業継続の困難を理由に経営の改善策として従業員を解雇することをいいます。経営状態という会社側の都合なので、法律で厳しく制限されています。(労働者をどの理由で解雇するにも「客観的に見て合理的な理由」・「社会通念上相当」だと認められなければいけません。)
そのため整理解雇には4つの要件が要求されています。
整理解雇の4要件
① 人員削減の必要性(経営上の必要性)
② 解雇を回避するための経費削減手段を講じること(解雇回避努力)
③ 解雇の対象者が合理的基準で選ばれていること(人選の合理性)
④ 対象者や組合に十分説明し、協議したこと(手続の相当性)
相当な努力を行ってもなお解雇を回避できないときは、会社都合での解雇「整理解雇」が認められるでしょう。
◆ 普通解雇
普通解雇とは懲戒解雇・整理解雇以外の解雇の総称のこと。一般的に普通解雇は、会社側と雇用者の信頼関係が破綻したことによる労働契約の解除という意味で使用されます。つまり普通解雇とは、労働者が労働契約(雇用契約)で約束した内容に違反したこと(債務不履行)を理由とする契約の解消です。つまり、労働契約(雇用契約)で約束したとおりの労働義務を果たさなかったことによる解雇です。
例えば、能力不足を理由とする普通解雇では、能力不足であるというだけでは、正当な解雇理由とは認められず、会社側が十分な指導をしたけれども改善の見込みがないといえる場合でなければ正当な解雇理由にはならないことが通常です。
また、業務命令違反を理由とする普通解雇についても同じで、業務命令に違反したというだけでは正当な解雇理由があるとは認められず、業務命令の趣旨を十分に従業員に説明した上で、それでも命令に従わない場合は懲戒処分などを行い改善の機会を与えて、それでも改善されない場合に初めて普通解雇における正当な解雇理由が認められるとされることが通常です。要は、ステップを踏んでそれ相応の対応を会社側で取ってください、ということです。
無断欠勤や遅刻が多いなどの労働者の勤務態度や、職務を遂行する能力の不足、業務命令違反、病気やけがによる就業不能など労働者の責任を理由に行われる解雇がこれに当たります。普通解雇は懲戒解雇よりも軽い制裁と位置付けられる場合が多いです。
懲戒処分の内容は?
労働者を処分する懲戒処分の一例です。処分内容が軽い順に記載します。
① 譴責(けんせき)
職務上の義務違反について口頭・文書で注意し、将来の職務姿勢を戒める処分のこと。いわゆる始末書の提出が要求され、労働者は不正や過失、職務上の義務違反などの行為を反省・謝罪し、将来同じ間違いを起こさないと誓約します。
② 減給
減給とは、会社が従業員との間で約束した賃金の一部を減額して支給する対応のこと。労働基準法で、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の1/10を超えてはならない」と定められています。
③ 出勤停止
労働者の企業秩序違反行為に対する制裁処分として行われ、出勤を禁止します。労働者の就労を一定期間禁止するため、その期間は賃金の支給は行われません。ただし就業規則の懲戒規定にその旨が記載されていることが条件です。
④ 降格
降格とは、労働者が会社に不利益を生じさせた場合に会社内の地位を下げるという措置のことで、セクハラなどの不祥事によって起こるケースなどがあります。こちらもあらかじめ就業規則に懲戒処分として降格の可能性があることを記載されていることが条件です。
⑤ 諭旨解雇
不祥事を起こした従業員のこれまでの功績や将来を考慮し、懲戒解雇という重い処分を避けるときに行われる解雇のこと。
⑥ 懲戒解雇
窃盗や横領、傷害など、会社の秩序を著しく乱して、大きなダメージを与えた際などに科すことができる制裁罰のひとつです。
解雇の段取り
① 解雇理由
会社が解雇を実施するに当たって、その上司から日頃の職務評価・勤務態度などのヒアリングを実施し、解雇する理由を的確にまとめます。このことで、解雇したい労働者への説得がしやすくなります。
会社が労働者を解雇するにあたって「不当解雇トラブル」のリスクは常にあります。労働者によっては解雇理由に納得いかず、裁判を起こす可能性があります。そのため会社側としてなぜその労働者を解雇したいのかという合理的な理由を、本人に伝える必要があります。
② 退職勧奨
会社が労働者に「自ら退職してほしい」と呼びかけを行うのが「退職勧奨」です。会社が一方的に労働者を辞めさせるのではなく、労働者自身が応じた場合に労働契約が終了して退職するというものです。
この場合、少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。退職勧奨はあくまで労働者に退職を促す行為であるため、原則として労働法による規制はありません。
③ 解雇通知書の作成
会社が労働者との雇用契約を解除することを本人へ予告するための文書を解雇通知書といいます。解雇を実施するには、就業規則に定められた解雇理由を解雇予定の日付と併せて解雇通知書に記し、解雇する30日より前に労働者に渡すことが重要です。
④ 解雇通知書を渡す
解雇対象の労働者に能力不足、無断欠勤、勤務態度不良などといった解雇理由を記載した解雇通知書を手渡し、サインを促します。
上記の通り「解雇」と「退職」ではその後の再就職への影響が異なるため、労働者が退職勧奨に応じる場合は、退職届を提出してもらうよう働きかけるのが望ましいでしょう。また会社が説明する解雇理由が就業規則のどの条文に該当するのかも確認します。
⑤ 解雇の発表
対象となる労働者の解雇が決定したら、会社側は社内で「誰がいつ解雇になったか」を発表します。しかし、懲戒処分の社内公表は無制約に許されるものではありません。そのため、対象者に配慮が求められるのです。
労働者に対して懲戒処分を行った旨を、うまく社内で公表すれば、その後の再発防止や企業秩序の回復にも役立つでしょう。
期間の定めがある場合
期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、あらかじめ使用者と労働者が合意して契約期間を定めたのですから、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないこととされています(労働契約法第17条)。そして、期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。
また、有期労働契約においては、契約期間が過ぎれば原則として自動的に労働契約が終了することとなりますが、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないとされています。
さらに、反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、雇止め(契約期間が満了し、契約が更新されないこと)をすることに、客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないときは雇止めが認められません。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになります(労働契約法第19条)。
勤怠管理:時間外労働の上限規制とは? 2021.07.24
時間外労働の上限規制とは?
労働基準法において、1週間について40時間を超えて労働させてはならない。そして1週間の各日については、1日について8時間を超えて労働させてはならない、と定められています。これが法律で決められている労働時間=法定労働時間です。これを超える労働時間を法定時間外労働時間といい、つまり時間外労働=残業時間です。この残業時間が残業手当として支払われる根拠になります。
一方で、各企業が就業規則等で定めている労働時間を所定労働時間といい、1日8時間以下であることが条件になっています。所定労働時間を超えた時間については、所定時間外労働時間といいます。
法律が改正されて、時間外労働について上限を設けましょう、ということになりました。
法改正前の時間外労働の扱いは?
労働基準法第33条で、①災害その他避けることのできない事由、②公務のため、など臨時の必要がある場合は、労働基準監督署の許可を得れば時間外・休日労働が認められる。それと第36条で、36協定による時間外・休日労働があります。この36協定とは何かというと、労働組合・労働者を代表する者と会社側双方で、時間外・休日労働について書面による協定を締結して、労働基準監督署へ届け出ることで、時間外・休日労働が合法となります。
36協定で締結できる時間外労働の限度時間が、原則1カ月45時間・1年360時間となっていた(厚生労働大臣の告示)。原則の時間外労働の限度時間に収まらない場合、特別の事情(臨時的なものに限る)が生じたときに限り、いわゆる特別条項付き協定を締結して届出を行うことが可能でした。つまり限度時間を超えて無制限に時間外労働させることが出来ていました。
背景
2018年に成立した働き方改革関連法(2019年施行)の目玉として、『時間外労働の上限規制』が導入されました。導入に至った背景には長年日本に根深くしみついている働き方の問題がありました。長時間労働から起こり得ることは、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因へと繋がっていきます。ひとつ「健康の確保」については、過労死の問題にも行き着きます。2000年代から過労死や過労自殺による労災が大きく取り上げられ、社会問題として認知されるようになりました。過労死問題を受け、厚生労働省は2001年に時間外労働は過労死に至る危険がある「過労死ライン」という労災認定の基準を設けました。また、2014年11月には「過労死等防止対策推進法」が制定され、長時間労働の取り組み強化をはじめとする対策が進められました。過労死を防ぐためには、過労死ラインを意識した実効性のある長時間労働対策を進める必要があるという流れがあり、時間外労働の上限規制に繋がりました。長時間労働を是正することによって、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の向上に結びつきます。このため、今般の働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。
法改正のポイント
法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合や法定休日に労働させる場合には、
労働基準法第36条に基づく労使協定(36(サブロク)協定)の締結
所轄労働基準監督署長への届出
が必要です。
36協定では、「時間外労働を行う業務の種類」や「時間外労働の上限」などを決めなければなりません。
※ この内容は、従来と変更ありません。
1. 時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間(厚生労働大臣の告示による上限)となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。
2. 臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)
● 時間外労働 ・・・ 年720時間以内
● 時間外労働+休日労働 ・・・ 月100時間未満
● 時間外労働+休日労働について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」
「6か月平均」が全て1か月当たり80時間以内
● 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
3. 法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断されます。
4. 大企業への施行は2019年4月ですが、中小企業への適用は1年猶予され2020年4月となります。
違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針
1. 時間外労働・休日労働は必要最小限に
2. 使用者は、36協定の範囲内であっても労働者に対する安全配慮義務を負います。また、労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まることに留意する必要があります。
◆ 36協定の範囲内で労働させた場合であっても、労働契約法第5条の安全配慮義務を負うこと
に留意しなければなりません。
◆ 「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(平成13年12月12日付け基発第
1063号厚生労働省労働基準局長通達)において、
● 1週間当たり40時間を超える労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾
患の発症との関連性が徐々に強まるとされていること
● さらに、1週間当たり40時間を超える労働時間が月100時間又は2~6か月平均で80時間
を超える場合には、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされていること
に留意しなければなりません。
3. 時間外労働・休日労働を行う業務の区分を細分化し、業務の範囲を明確にしてください。
4. 臨時的な特別の事情がなければ、限度時間(月45時間・年360時間)を超えることはできません。限度時間を超えて労働させる必要がある場合は、できる限り具体的に定めなければなりません。この場合にも、時間外労働は、限度時間にできる限り近づけるように努めてください。
◆ 限度時間を超えて労働させることができる場合を定めるに当たっては、通常予見することのでき
ない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をで
きる限り具体的に定めなければなりません。
「業務の都合上必要な場合」・「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそ
れがあるものは認められません。
◆ 時間外労働は原則として限度時間を超えないものとされていることに十分留意し、限度時間を
超える場合でも、(1)1か月の時間外労働及び休日労働の時間、(2)1年の時間外労働時間、
を限度時間にできる限り近づけるように努めなければなりません。
◆ 限度時間を超える時間外労働については、25%を超える割増賃金率とするように努めなけれ
ばなりません。
5. 1か月未満の期間で労働する労働者の時間外労働は、目安時間(※)を超えないように努めてください。
(※)目安時間 1週間:15時間、2週間:27時間、4週間:43時間
6. 休日労働の日数及び時間数をできる限り少なくするように努めてください。
7. 限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保してください。
限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保するための措置について、次の中から協定することが望ましいことに留意しなければなりません。
(1) 医師による面接指導
(2) 深夜業(22時~5時)の回数制限
(3) 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
(4) 代償休日・特別な休暇の付与
(5) 健康診断
(6) 連続休暇の取得
(7) 心とからだの相談窓口の設置
(8) 配置転換
(9) 産業医等による助言・指導や保健指導
8. 限度時間が適用除外・猶予されている事業・業務についても、限度時間を勘案し、健康・福祉を確保するよう努めてください。
◆ 限度時間が適用除外されている新技術・新商品の研究開発業務については、限度時間を勘案
することが望ましいことに留意しなければなりません。また、月45時間・年360時間を超えて時
間外労働を行う場合には、7の健康・福祉を確保するための措置を協定するよう努めなければ
なりません。
◆ 限度時間が適用猶予されている事業・業務については、猶予期間において限度時間を勘案す
ることが望ましいことに留意しなければなりません。
目先の目標は
時間外労働の上限規制は、特別条項付き36協定を締結している企業に対して、明確な時間外労働の上限を法制化したことで、長時間労働の抑制が期待されています。そのためには、従業員の労働時間・残業時間を正確に把握できる仕組みを導入して、確実に運用していくことがまず第一歩となります。それとは別に、業務効率化を通して残業時間の削減を目指す企業もあるのではないでしょうか。確かにどちらも大事な課題です。
でも本来働き方改革において残業時間を削減する目的は、生産性向上です。生産性が向上すれば少人数で同じ業務量をこなせたり、より重要な業務に時間を振り向けたりと多くのメリットがあります。働きやすい職場環境を整えることが、企業の利益に直結します。残業時間を削減するだけではなく、デジタル化を取り入れながら業務効率化を図り生産性向上を達成、なおかつ残業時間を減らすことで余暇が増えるメリットを従業員に広めることが重要です。
勤怠管理:有給休暇の取得義務とは? 2021.07.23
有給休暇の取得義務とは?
まず年次有給休暇とは、使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない(労働基準法39条)、とあります。通常の会社休日以外に労働者が請求した日付の休日を別にもらえるというものです。これは法律で定められた労働者に与えられた権利です。正社員、パートタイム労働者などの区分に関係なく、上記の要件を満たしていれば与えられる権利です。
● 通常の労働者の付与日数
● 週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数
今般、労働基準法が改正され、2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
もともとある年次有給休暇の日数が増えるわけではなく、権利として持っているものはきちんと行使しましょう・使いましょうということです。
有給休暇の取得義務化の背景
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「長時間労働問題」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。
年次有給休暇は、働く方の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則、労働者が請求する時季に与えることとされています。しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、有給休暇の取得率が50%を上回っている程度で、国が目標としている70%とは乖離が大きく、取得率が低調な現状にあるため、年次有給休暇の取得促進が課題となっていました。
※ 政府の数値目標では、2025(令和7)年までに年次有給休暇の取得率を70%にすることとされています。
年次有給休暇の付与に関するルール(もともとあった制度内容)
◆ 年次有給休暇を与えるタイミング
年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることとされていますので、労働者が具体的な月日を指定した場合には、原則その日に年次有給休暇を与える必要があります。
しかし、使用者は労働者から年次有給休暇を請求された時季に、年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合(同一期間に多数の労働者が休暇を希望したため、その全員に休暇を付与し難い場合等)には、他の時季に年次有給休暇の時季を変更することができます。
● 年次有給休暇の原則
労働者が具体的な時季を指定した期間(日数単位で最低1日)すべて会社を休み、会社には来ない。
● 計画年休(年次有給休暇の計画的付与)
労使協定で、計画的に取得日を定めて年次有給休暇を与えることが可能です。ただし、労働者が自ら請求・取得できる年次有給休暇を最低5日残す必要があります。
● 半日単位年休
年次有給休暇は1日単位で取得することが原則ですが、労働者が半日単位での取得を希望して時季を指定し、使用者が同意した場合であれば、1日単位取得の阻害とならない範囲で、半日単位で年次有給休暇を与えることが可能です。
● 時間単位年休
労使協定で、年次有給休暇は1日単位で取得することが原則ですが、労働者が時間単位での取得を請求した場合には、年に5日を限度として、時間単位で年次有給休暇を与えることが可能です。
● 特別休暇
年次有給休暇に加え、休暇の目的や取得形態を任意で設定できる会社独自の特別な休暇制度を設けることも可能です。
※ 時間単位年休及び特別休暇は、2019年4月から義務付けられる「年5日の年次有給休暇の確実な取得(義務化)」の対象とはなりません。
◆ 年次有給休暇の繰越
年次有給休暇の請求権の時効は2年であり、前年度に取得されなかった年次有給休暇は翌年度に与える必要があります。
◆ 不利益取扱いの禁止
使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければなりません。(具体的には、精皆勤手当や賞与の額の算定などに際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤または欠勤に準じて取扱うなど、不利益な取扱いをしないようにしなければなりません。)
改正ポイント
① 対象者
年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象です。
② 年5日の時季指定義務
使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内の5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。
③ 時季指定の方法
使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。
④ 時季指定を要しない場合
既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません。
労働者が自ら請求・取得した年次有給休暇の日数や、労使協定で計画的に取得日を定めて与えた年次有給休暇の日数(計画年休)については、その日数分を時季指定義務が課される年5日から控除する必要があります。
つまり、
▶ 「使用者による時季指定」、「労働者自らの請求・取得」、「計画年休」のいずれかの方法で労働者に年5日以上の年次有給休暇を取得させれば足りる
▶ これらいずれかの方法で取得させた年次有給休暇の合計が5日に達した時点で、使用者からの時季指定をする必要はなく、また、することもできないということです。
⑤ 年次有給休暇管理簿
使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。
時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年休を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければなりません。(年次有給休暇管理簿は労働者名簿または賃金台帳とあわせて調製することができます。また、必要なときにいつでも出力できる仕組みとした上で、システム上で管理することも差し支えありません。)
⑥ 就業規則への規定
休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)であるため、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。
⑦ 罰則
②・⑥に違反した場合には罰則が科されることがあります。
罰則による違反は、対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われますが、労働基準監督署の監督指導においては、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています。
罰金は、労働者1人につき必要となるため、年次有給休暇を取得させなかった対象者が10人であれば、合計300万円の罰金まで膨れ上がる可能性も考えられます。認識・管理不足で違反することがないよう、十分な対策を取りましょう。
年次有給休暇の取得は労働者の心身の疲労の回復、生産性の向上など労働者・会社双方にとってメリットがあります。年5日の年次有給休暇の取得はあくまで最低限の基準です。
5日にとどまることなく、労働者がより多くの年次有給休暇を取得できるよう、環境整備に努めましょう。
勤怠管理:70歳定年制とは? 2021.07.18
70歳定年制とは?
70歳定年制とは、定年の年齢を企業が70歳と定め、満70歳になった際に雇用契約を自動で終了させる制度のことです。
就業規則等で従業員の定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上とする必要があります(高年齢者雇用安定法第8条)。定年年齢を65歳未満に定めている企業は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、①「65歳までの定年の引上げ」・②「65歳までの継続雇用制度の導入」・③「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要があります(高年齢者雇用安定法第9条)。
②「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。この制度の対象者は、以前は労使協定で定めた基準によって限定することが認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、2013(平成25)年度以降、希望者全員を対象とすることが必要となっています。
65歳定年制とは? で触れている内容にもなります。
2021年4月からこのように変わります。ただ努力義務なので何もしなかったことで問題になることは今のところありません。
背景
2013年の高年齢者雇用安定法の改正によって、65歳までの雇用確保が義務化(実質65歳定年制)されました。経過措置も2025年3月末で終了し、2025年4月からは経過措置もなくなり全企業に実質65歳定年制が適用されます。
その理由の一つとして、厚生年金の支給開始年齢が、2025年の65歳となることが決まっており、働ける期間を65歳までとすることで厚生年金受給のタイミングと同じにして、無収入期間をなくす意図です。
それとは別に、65歳までの雇用確保が義務化の経過措置が完了する前に、2021年4月からは、企業は70歳までの就業機会確保、すなわち「実質70歳定年制」が努力義務となります。
日本の公的年金の受給開始年齢は元々55歳でした。それが60歳になり、65歳へと段階的に引き上げられてきました。65歳までの雇用確保の義務化もそもそも努力義務から導入され、時を経て完全導入となっております。このように公的年金と雇用確保とは常に年齢が連動しておりました。そこへもともと公的年金の受給開始年齢のさらなる引き上げを模索していたところへ、今回実質70歳定年制が努力義務として課されることになりました。公的年金の受給開始年齢も引き上げられるのか、と考えるのは詮索しすぎでしょうか。
70歳までの就業機会確保(改正高年齢者雇用安定法)の内容
① 「70歳までの定年の引上げ」
② 「70歳までの継続雇用制度の導入」
③ 「定年の廃止」
これに加えて
④ 継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 継続的に次のいずれかの社会貢献事業へ従事できる制度の導入
(1) 事業主が自ら実施する社会貢献事業
(2) 事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業
④及び⑤を創業支援等措置といいますが、これらを導入するに当たっては、創業支援等措置の実施に関する計画を作成した上で、過半数労働組合等の同意を得る必要があります。
④・⑤については、65歳までの雇用確保の義務化にはなかった項目になります。今回新たに導入されました。
創業支援等措置の実施に関する計画の記載方法について_2021.04.01.pdf
日本は急激なスピードで少子高齢化が進み、労働者の減少は明らかです。そのため、若者の労働力確保も大事ですが、全体の労働力確保の観点から、リタイヤする・した労働者に働いてもらうことも必要な時代になってきました。企業としては、改正高年齢者雇用安定法が現時点では努力義務(今は何もしなくても問題ありません)ですが、義務化の可能性もある以上、導入を検討した方が混乱は少なく済むでしょう。
勤怠管理:65歳定年制とは? 2021.07.17
65歳定年制とは?
65歳定年制とは、定年の年齢を企業が65歳と定め、満65歳になった際に雇用契約を自動で終了させる制度のことです。
就業規則等で従業員の定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上とする必要があります(高年齢者雇用安定法第8条)。定年年齢を65歳未満に定めている企業は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、①「65歳までの定年の引上げ」・②「65歳までの継続雇用制度の導入」・③「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要があります(高年齢者雇用安定法第9条)。
②「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。この制度の対象者は、以前は労使協定で定めた基準によって限定することが認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、2013(平成25)年度以降、希望者全員を対象とすることが必要となっています。
背景
日本では長く、60歳が定年年齢とされてきました。しかし戦後平均寿命が格段に延び、60歳がまだ働き盛りの年齢となってきたことや、それによる生活上の経済的必要が出てきました。また、厚生年金の支給開始年齢が段階的に65歳に引き上げられることにより、60歳の定年以降年金支給まで無収入になる期間ができるのを防ぐために、2013年4月に改正高年齢者雇用安定法が制定されました。
これにより、希望する従業員全員の雇用を65歳まで確保するため、①「65歳までの定年の引上げ」・②「65歳までの継続雇用制度の導入」・③「定年の廃止」のいずれかを、2025年までに実施することが企業に義務づけられました。実質的に従来の60歳定年制から65歳定年制へ移行することとなります。
現状の対応は?
従業員65歳までの雇用確保の状況はどのようになっているのでしょうか?
① 「65歳までの定年の引上げ」
② 「65歳までの継続雇用制度の導入」
③ 「定年の廃止」
2013年4月に改正高年齢者雇用安定法が制定されました。ほとんどの企業が対応されている現状が見えてきました。前述したとおり、3つの選択肢をとることは、今までの高年齢者雇用安定法でも定められていました。しかし、今回の改正では、継続雇用制度の導入を希望者全員としないという企業の例外措置が撤廃されたため、希望者全員を継続雇用制度の対象にする必要がでてきました。ただし、全員を雇わないといけないわけではありません。つまり、労働者側とお互いの雇用条件が合わなかった場合には、雇用することができなかったとしても法律に違反することにはならないのです。
継続雇用制度で注意すべきポイントは、現役時代と同じ仕事内容や勤務条件が、再雇用後も継続されるとは限らない点です。以前は正社員として雇用されていた場合でも、一度退職した後での雇用となるため、契約社員や嘱託、パートなどのように雇用形態も変わるのが一般的です。給料の減額といったことも起こり得ます。このように再雇用制度を利用して働き続ける場合は、そうした変化を想定して、キャリアプランを考えることが大切です。
65歳への雇用延長するにあたってのメリット・デメリット
メリット
● 優秀な人材確保
● 経験者の継続雇用
デメリット
● 健康上の不安
● 役職ポストの固定化
● 若者採用を抑制、給与削減の懸念
● 退職金など人件費が増加
勤怠管理:希望退職とは? 2021.07.14
希望退職1万人超え、20年の1.7倍 観光は11年ぶり募集
2021年に上場企業が募った希望退職者数が6月上旬で1万人を超えた。新型コロナウイルスの影響で退職の募集が急増した20年の同時期と比べても1.7倍に増えた。外出自粛が直撃した観光業では11年ぶりの募集があった。景気浮揚の切り札であるワクチンの接種は諸外国より遅れており、観光や外食では退職者数がさらに膨らむ可能性がある。
2021年6月9日・日経新聞より
希望退職とは?
希望退職とは、会社が従業員の自発的な退職を募る仕組みのこと。
日本の労働法は、会社側が一方的に従業員を解雇することは、労働者保護の観点から厳しく制限しています。そのため、会社の業績が悪化したからといっても、従業員を解雇するには、大きなハードルがあります。
だから、リストラの前段階の対応として、希望退職を募集して人員削減を行おうというものです。「希望」と言っているため、従業員の意思が最優先され、法的な拘束力があるものではないため、会社側から強制することはできません。ただ、希望退職に伴う退職の場合は、原則として、自己都合ではなく会社都合での退職が成立します。
ちなみに希望退職は希望すれば100%成立するというたぐいではなく、能力の高い従業員や専門的な従業員は引き止めに合うこともあります。原則といったのは、希望退職の成立には「従業員と会社双方の合意」が求められるため、こうした引き止めも認められています。その際に会社の合意がないままあいまいに退職した場合は、会社都合ではなく自己都合の退職となってしまうこともあるため注意が必要です。
在籍している会社が希望退職者を募り始めた場合には、まずは冷静に受け止めましょう。もちろん経営状況を改善するための施策ですから、不安になるかと思いますが、会社がすぐに倒産するわけではありません。
余談ですが、早期退職とは?
希望退職と混同しやすいのが早期退職で、この2つはまったくの違う制度です。その最たる違いは、「人員整理を目的とするかどうか」という点になります。
希望退職制度は人員削減を目指しているケースがほとんどですが、早期退職制度は、組織の人員構成を整えたり、従業員の人生の選択肢を広げたりすることを目的とします。基本的に中高年層を対象にした定年前に退職を促す制度で、早期退職制度の利用者に対しては退職金を割り増すことや退職後の職を紹介するなどの優遇措置(ケースバイケース)が取られることも多いのです。
近年、会社業績は好調であるにも関わらず、将来を見据えて組織を強化する早期退職を募集するパターンも出てきました。
希望退職に応募するメリット
● 退職金
一般に自己都合で会社を辞めると退職金水準はカットされます。勤続年数によりますが、10~30%くらいはカットされるのではないでしょか。しかし希望退職を募った期間の退職についてはこの自己都合減額を行いません。これ以外で、退職金の減額がないケースは定年退職くらいです。
あるケースとないケースがありますが、退職金の上積みを行うことで、短期的に退職者を増やすことも希望退職期間には行われます。ただし、どれだけ上積みされるかは各社の取り組み度合いによって異なります。給与の半年程度を上積みする会社もあれば、1年~3年といった金額を支払うケースもあります。希望退職の条件と一定の応募期間が会社から示され、その間に応募した社員が示された割増退職金の条件で退職することができることがあります。
会社からしてみれば一時的に人件費コストが増えても、中長期的に固定的な人件費(給料・賞与、社会保険料等)の負担を負わずに済むため、こうした割増退職金を提示するわけです。
● 失業保険
① 希望退職の場合は「会社都合」での退職となるため、「自己都合」での退職の場合に比べて2ヶ月以上早く、失業保険の支給が可能になります。
② 「会社都合」の退職の場合、「自己都合」の退職よりも、最長で2倍以上の期間にわたって失業保険を受け取ることができます。
ただ失業保険を受ける場合は、次の会社で働いていないということですから、喜ばしいことではありませんね。
● 転職活動の際に離職理由を説明しやすい
業績悪化の希望退職の場合、「自分の意志で退職した」という意味で、リストラよりも格段に離職理由を説明しやすいはずです。じっくり自分が希望する会社を探した上で、転職活動に集中できるはずです。
希望退職に応募するデメリット
通常退職した場合と同じと考えていただいてください
● 給与が得られない
一時的とは言え、収入がなくなります。すぐ失業保険が得られるかもしれませんが、いつもでも貰えるわけではありません。割増退職金があったとしても、安定収入がない状態には大きなリスクがあります。
● 転職先が決まらない
景気悪化などが理由となり、想定していたよりも転職先が決まらないことも考えられます。
希望退職はしない
希望退職を選ばないのも一つの選択です。多くの場合、会社の業績悪化があるため、経営再建のために組織変革や業績改善など、多くの課題を社員として解決し続けるという険しい道を進むことになります。受ける受けないは本人の意志次第で、後悔のない選択をしましょう。
勤怠管理:週休3日制とは? 2021.07.13
週休3日制とは?
今では多くの企業が、週休2日制度や完全週休2日制度を設けているなか、1週間あたりの休みを1日増やして、週休3日とする制度。もともと週5日働いていた仕事を週4日とすることで、より多様な働き方が可能になるとされる。
背景
そもそも日本は労働時間が長い傾向にあり問題視されてきた。幾分減少してきたが、まだ改善の余地があり、2019年4月に働き方改革がスタートした。『働き方改革関連法』などから、労働環境の向上や多様な働き方を認める動きがあり、その中の一つとして注目されている。昨今ワークライフバランスが重要視されるようになり、育児や介護、学び直し、余暇の充実など様々な要素から取り入れる企業が増えている。その理由として、労働人口が減少・少子高齢化が進行する中で、多様な働き方を認めないと労働者を確保する目的や、従業員の満足度や生産性向上が覚束ないおそれがあり、必要性からも指摘されている。
制度導入のメリットは?
従業員にとっては、働き方の選択肢が増えることになり、子育てや介護などで仕事を断念せざるを得なかった人も続けられるようになります。また家族と過ごす時間、趣味、自己啓発、セミナー参加などで新たな能力や感性を磨く時間にも使えることができます。そして、しっかりと休むことが出来、リフレッシュして仕事に取り組めるため、画期的なアイデアが生まれ、イノベーションにつながる可能性もあるとされている。その結果、離職率を抑制出来たり、優秀な人材確保につながることも期待されます。
制度導入のデメリットは?
従業員が1日多く休むため、仕事がまわりにくくなり、週休2日制なら終わるはずの業務が終わらないケースが起こり得ます。また、従業員が週休3日となると取引先と連絡が減ってしまい、スムーズなコミュニケーションが難しくなることもあるでしょう。
週1日休みが多くなるため、従業員にとっては収入が下がることも起こり得ます。そうした場合に、さらなる生産性低下や稼ぐ力の低下につながりやすい懸念があります。
週休3日制の導入パターン
① 労働時間に応じて収入減
休日が増えて労働時間が減った分、給与を減額する制度を採用する企業
② 労働時間は減るが給与は同じ
休日が増えて労働時間が減っても、同様の成果を出せば待遇は変わらないという制度を採用する企業
③ 労働時間と給与は同じで休日が増える
毎週の休日を2日から3日に増やした上で、1週間の労働時間や給与を変えない制度。例として、1日あたり10時間勤務×4日間という働き方です。
厚生年金や社会保障への影響は?
上記①のパターンのように給与が減ると、厚生年金をはじめ、健康保険や介護保険、出産手当金など様々な社会保険の給付にマイナス影響を与える可能性がある。②・③のようなパターンであれば給与が変わるわけではないので、影響はありません。
制度導入する際に配慮したいこと
◇ 目的を明確にして従業員と共有
週休3日制を導入する際には、目的を明確にし、従業員と共有する必要があります。導入目的・給料が減る可能性があることをしっかり説明しましょう。特に業務内容や就業時間の変化、人事評価制度の見直しなどがある場合には、それも説明することが大切です。説明を避けてしまうと、最悪離職してしまう人が出てしまう可能性もあります。また従業員同士のトラブルにつながる恐れもあるため、きちんと説明するのはそのためです。
「選択的週休3日制」 政府 導入に向け検討進める
2021年4月5日のNHKニュースより
新型コロナウイルスの感染拡大で、政府は多様な働き方ができる環境を整えるため、希望する人が週休3日で働ける仕組みの導入に向けて検討を進めています。新型コロナウイルスの影響が長期化する中、企業の間ではテレワークや時差出勤の導入に加え、週休3日制など働き方を抜本的に見直す動きが広がっています。こうした中、政府は多様な働き方ができる環境を整えるため、希望する人が週休3日で働ける「選択的週休3日制」の導入に向けて検討を進めています。週休3日で働く場合、休みの日を活用して地方で兼業を行うケースなども想定されるとして、これまでに都市部から地方への人の流れを促す観点から、政府が交通費や滞在費を支援する案が出ています。「選択的週休3日制」は自民党の一億総活躍推進本部でも検討が進められていて、政府はことしの「骨太の方針」に反映させることも含め、調整することにしています。
政府が検討している段階ですが、さまざまな施策を見てみるとライフワークバランスに沿った、労働時間の短縮・有給休暇の取得率向上など手を打っているので、週給3日制がどのような形で纏まるのかわかりませんが、近いうちに概要が見えてくることでしょう。
週休3日制を導入する場合は、働き方を含めたメリット・デメリットをよく検討したうえで結論を出、実施する必要があるでしょう。
勤怠管理:勤務間インターバルとは? 2021.07.12
「勤務間インターバル」とは?
「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るもので、2019年4月から、制度の導入が努力義務化されました。
制度導入の背景
働き方改革関連法によって改正された労働基準法においては、時間外労働の上限(1か月及び1年の時間外労働の限度時間数が規定)規制が導入された。一方、企業における労働時間の状況については、必要に応じて変形労働時間制をはじめ、フレックスタイム制、裁量労働制などの弾力的な労働時間制度を採用しながら、企業の実態に即した労働時間制度が導入されている。
各社、業務の繁忙期などにより、特定の時期に労働時間が集中する場合や、夜勤、交替制勤務といった勤務体系において、勤務間隔が短い場合など、終業時刻から次の始業時刻までの間に十分な休息時間を取ることが出来ない場合もあり得る。
労働者の終業時刻から次の始業時刻の間に一定時間の休息が必要な理由として、『睡眠と心身の健康状況』についての研究結果がある。それによると、1日の睡眠時間が6時間未満の者では、7時間の者と比べて、居眠り運転の頻度が高いことや、交通事故を起こした運転者では、睡眠時間が6時間未満の場合に追突事故や自損事故の頻度が高いことが示されている。また、睡眠時間を1日当たり約5.8時間に制限すると、制限せずに約8.6時間眠らせた場合に比べて眠気が増し、注意力が低下することが示されている。
『労働時間と健康』では長時間労働が、心血管疾患の発症リスク、精神疾患の発症リスク、週50時間以上の長時間労働はメンタルヘルスを顕著に悪化させるなどの調査が報告されている。
2018年7月に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を変更する際の過労死等防止対策推進協議会の議論の過程を経て、過労死を防止する1つの手段として、勤務間インターバル制度の普及に向けて、数値目標が次のとおり設定されている。
労働者30人以上の企業のうち、
① 勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする。(2020年まで)
② 勤務間インターバル制度(終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けることについて就業規則又は労使協定等で定めているものに限る。)を導入している企業割合を10%以上とする。(2020年まで)
勤務間インターバル制度の導入状況を見ると、2017年1月1日時点の企業の割合は1.4%となっており、2018年1月1日時点での企業の割合は1.8%にとどまっている。
労働時間等設定改善法改正(2019年4月より)
この状況を踏まえ、まずは勤務間インターバル制度の周知や導入促進を図ることが重要であることから、働き方改革関連法において、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(以下「労働時間等設定改善法」という。)が改正され、「労働時間等の設定」の定義に、「深夜業の回数」、「終業から始業までの時間」が追加されるとともに、事業主の責務として、終業時刻と次の始業時刻の間に一定時間の休息を確保すること(勤務間インターバル制度の導入)に努めなければならないことが定められた。
労働基準法等の改正内容
<時間外労働の上限規制の導入>
○ 時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定する。
<一定日数の年次有給休暇の確実な取得>
○ 使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。
○ 年次有給休暇の取得状況の把握のため、年次有給休暇管理簿を作成しなければならないこととする。
労働時間等設定改善法の改正内容
<勤務間インターバル制度の普及促進>
○ 法の対象となる「労働時間等の設定」の定義に、「深夜業の回数」「終業から始業までの時間」を追加する。
○ 事業主等の責務として、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保すること(勤務間インターバルの導入)に努めなければならないこととする。
<企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組を促進>
○ 企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができる特例を設けることとする。
<取引上の配慮促進>
○ 事業主の責務として、短納期発注や発注の内容の頻繁な変更を行わないよう配慮するよう努めるものとする。
(参考) EU諸国の現状
EU加盟国の全ての労働者に、24時間ごとに、最低でも連続11時間の休息期間を確保するために必要な措置を設けることとされている。業務の特殊性から労働時間の長さが測定できない場合など様々なケースがあるため、かなり広範な例外、特例措置を許容している。
インターバル時間数は、ドイツ、フランス、イギリスにおいては11時間、ギリシャ、スペインにおいては12時間とされている。
勤務間インターバル制度導入によるメリット
(1)健康維持に向けた睡眠時間の確保
(2)生活時間の確保によるワーク・ライフ・バランスの実現
(3)魅力ある職場づくりによる人材確保・定着
勤務間インターバル制度普及に向けた課題
(1)制度の認知度
(2)制度導入に当たっての手順
(3)事業場における経費負担
(4)代替要員の確保
勤務間インターバル制度導入に当たっての手順
勤務間インターバル制度の背景にあるのは、長時間労働です。その根底には日本古来の働き方の問題点が横たわっています。働き方改革を通じて健康増進だけでなく、生産性向上、従業員の定着など効果がございます。十分に考慮した上で、検討してみましょう。
勤怠管理:裁量労働制とは? 2021.06.27
裁量労働制とは?
裁量労働制は、労働基準法の定めるみなし労働時間制のひとつとして位置づけられている。この制度が適用された場合、労働者は実際の労働時間とは関係なく、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなされる。業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務に適用できる。
適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務の2種類に限定されている。
① 「専門業務型裁量労働」 ・・・ 労使協定の締結
② 「企画業務型裁量労働」 ・・・ 労使委員会の決議
導入に際しては、労使双方の合意を所轄労働基準監督署長への届け出が必要である。
つまり裁量労働制(みなし労働制)は、実際の労働時間に関係なく、労使で合意した時間分が報酬として支払われる制度です。
専門業務型裁量労働制
業務遂行手段および時間配分の決定などに関して、使用者が労働者に具体的な指示をすることが困難な業務において導入することができます。
対象となる業務は、次の19の業務に限定されています。
1.新商品・新技術の研究開発、または人文科学・自然科学の研究の業務
2.情報処理システムの分析・設計の業務
3.新聞・出版の事業における記事の取材・編集の業務、
放送番組の制作のための取材・編集の業務
4.デザイナーの業務
5.放送番組、映画等の制作の事業における、プロデューサーまたはディレクターの業務
6.コピーライターの業務
7.システムコンサルタントの業務
8.インテリアコーディネーターの業務
9.ゲーム用ソフトウェアの創作業務
10.証券アナリストの業務
11.金融工学等の知識を用いる金融商品の開発業務
12.大学での教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
13.公認会計士の業務
14.弁護士の業務
15.建築士の業務
16.不動産鑑定士の業務
17.弁理士の業務
18.税理士の業務
19.中小企業診断士の業務
専門業務型裁量労働制の導入方法
ステップ1 労使協定の締結
裁量労働制度を導入する事業場ごとに労使協定を締結します。これを導入すると従業員の働き方や給与体系に大きく影響するため、企業と従業員代表者とで十分協議した上で定める内容を決定します。
●労使協定で定める内容
1.制度の対象業務
2.対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分などに関し労働者に具体的な指示をしないこと
3.労働時間としてみなす時間
4.対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を
確保するための措置の具体的内容
5.対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
6.協定の有効期間 (※3年以内とするのが望ましい)
7.上記の4および5に関し労働者ごとに講じた措置の記録を6の期間
およびその期間満了後3年間保存すること
このほか、「時間外労働」「休憩時間」「休日労働」「深夜業」に関する内容が、専門業務型裁量労働制対象の従業員とその他の従業員とで異なる場合は、同様に労使協定で規定するとよいでしょう。
ステップ2 協定届の作成
労使協定で定めた内容を基に「専門業務型裁量労働制に関する協定届」を作成します。「業務の種類」の欄は先述した対象業務の中から対象となる業務を選んで記載します。
ステップ3 就業規則の変更
労使協定を締結したら、その内容に沿って就業規則を変更します。労使協定は、罰則の適用を受けないとする「免罰的効力」を持つにすぎません。労働者に対して労働契約を規律する際は、就業規則で規定して初めて「規範的効力」が発生します。企業と従業員間のトラブル防止のためにも、漏れなく整備することが重要です。
●就業規則へ規定しておくべき内容
1.労使協定の定めにより、専門業務型裁量労働を命じることがあること
2.専門業務型裁量労働制の対象者は、始業・終業時刻の定めに例外があること
3.専門業務型裁量労働制の対象者は、休憩時間の定めに例外があること
4.休日・深夜の労働を行う場合は、別途申請が必要であること
ステップ4 労働基準監督署長へ届出
作成した協定届と改正した就業規則は、いずれの内容も労働者へ十分に周知した上で所轄労働基準監督署長へ届け出をします。「協定届」は原則、事業場ごとに行いますが、「就業規則変更届」は、複数の事業場がある場合本社で一括して届け出をすることも可能です。
ステップ5 雇用契約書の更新
裁量労働制の対象となる従業員とは、新たに雇用契約書の結び直しが必要です。始業・終業時刻および所定時間外労働の有無に関する事項の一つに「裁量労働制」の項目を追加し、労使協定で定めた内容に基づき労働時間を記載しましょう。
企画業務型裁量労働制
業務遂行手段および時間配分の決定などに関し、使用者が労働者に具体的な指示をしない業務で導入することができます。専門業務型のように対象業務が限定されているわけではありませんが、どの事業場でも導入できるわけではありません。具体的には、次の3要件の全てを満たした業務が存在する事業場に限られています。
1.本社・本店である事業場
2.事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場
3.独自に事業の運営に影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行う支社・支店等
企画業務型裁量労働制の導入方法
ステップ1 労使委員会の設置
事業場内に企業側およびその企業の従業員の代表者で構成する「労使委員会」を設置します。労使委員会には賃金や労働時間などの労働条件を調査審議し、事業主へ意見を述べる役割があります。委員の人数に決まりはありませんが、労使1名ずつから成るものは認められません。また、従業員の代表委員が全体の半数を占める必要もあります。
労使委員会の設置にあたっては、日程や手順など必要事項を企業と従業員とであらかじめ話し合っておくとよいでしょう。
ステップ2 労使委員会で決議
労使委員会で企画業務型裁量労働制の内容を決議します。決議の要件は、出席している労使委員の5分の4以上の多数による決議が必要です。
適正な決議をするためには、決議にあたって十分な情報を各委員が周知している必要があります。そのため、企業は対象者の賃金制度や評価制度での情報は労使委員会に対して開示するのが望ましいでしょう。
●労使委員会で決議する事項
1.対象業務の具体的な範囲
2.対象労働者の具体的な範囲
3.労働時間としてみなす時間
4.対象労働者の健康・福祉確保の措置の具体的内容
5.対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
6.対象労働者個人からの同意の取得・不同意者の不利益取り扱いの禁止について
7.決議の有効期間(3年以内が望ましい)
8.企画業務型裁量労働制の実施状況に関する労働者ごとの記録を保存すること
(決議の有効期間中および満了後3年間)
ステップ3 就業規則の変更
企画業務型裁量労働制の導入は、専門業務型裁量労働制同様、従業員の労働時間や賃金に関わることです。そのため、労使委員会で決議された内容は就業規則に規定して従業員に対し十分周知する必要があります。
ステップ4 労働基準監督署長へ届出
労使委員会で決議した内容を、所定様式で所轄労働基準監督署へ届け出ます。企画業務型裁量労働制は労使委員会による決議だけでは導入できず、届け出をして初めて有効な制度となります。就業規則も同様に改正後は速やかに届け出るようにしましょう。
ステップ5 対象労働者の同意
企画業務型裁量労働制を導入する際は、個別に対象の労働者本人から同意を得る必要があります。同意を得る際は、従業員に対する「十分な説明」や「書面での確認」など、労使委員会で決議された手続き方法に沿って、適正に行います。同意が得られない場合も、労働者に対して解雇や不利益な扱いをしないように注意しましょう。
ステップ6 制度の実施と導入による手続き
ステップ1から5まで完了し、実際に対象となる従業員が対象業務に就くことで、企画業務型裁量労働制が実施できます。導入後には、労使委員会で決議された従業員への措置を講じましょう。このほか、制度導入後は、労使委員会で決議をした日から起算して6カ月以内ごとに1回、所轄労働基準監督署への定期報告が必要です。
専門業務型裁量労働制でも企画業務型裁量労働制でも上記に記載の通り、導入要件が多岐にわたることや、裁量労働制の適用業務も狭いためハードルが高いのが実情です。
厚生労働省の平成31年就労条件総合調査で専門業務型裁量労働制が1.8%、企画業務型裁量労働制が0.8%とあまり導入が進んでいるとは言えません。
裁量労働制とはどのような仕組みの制度か?
●勤務時間帯は企業から決められず出退勤も個人の自由となる
裁量労働制は、時間管理も個人の裁量に任せることになるので、勤務時間帯も決められず、出退勤も自由です。それでは、裁量労働制に労働時間の概念が無いというと、そのようなわけでもなく、あらかじめ月に◯時間働いたとしておく、「みなし労働時間制」が取り入れられることになります。
●労働時間の概念はあるが予め『みなし時間』が設定されている
仮に、みなし時間が1日8時間だとすると、実際に6時間働いても10時間働いても、処理上は「8時間働いた」ということになります。このみなし時間が、実際に働く労働時間とあまりにもかけ離れていると、労働者も不満に思いますので、それまでの労働環境を元に労使で決める必要があります。そのため、導入要件で労使の合意が求められている。また、このみなし時間についても労働基準法の規制は及ぶため、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合は、36協定を結ぶ必要があり、法定労働時間を超えている場合は、割増賃金を支払う必要があります。
●労働時間を管理するのも労働者自身になる
裁量労働制では、労働者自身が働く時間や働き方を決めます。そのため、労働者は出勤・退勤の時間を自ら決めることができますし、どのような業務をどのように進めるかも労働者の裁量に委ねられます。裁量労働制の下では、上司が部下に対して出退勤の時間を決めたり、業務の進め方について個別具体的に指示することはできません。
●裁量労働制の休日手当て
みなし時間で、いつでも働いてよいという認識があるかもしれませんが、もちろん休日を設けなくてはいけません。しかし、仕事量が多すぎて休日も出勤するような方も多くなっています。
裁量労働制は、あくまで所定労働日の労働時間を一定時間とみなす制度であるため、休日に働いた分の賃金は別途算定して支払われないといけません。
この場合の労働時間を実労働時間で計算すべきか、みなし労働時間で計算すべきかは疑義があるところですが、裁量労働制はあくまで所定労働日の労働に対する規律であって、休日労働まで規律するものではないことを踏まえますと、就業規則等に特段の定めがない場合は実労働時間で計算すべきでしょう。
裁量労働制を行う会社にとっては、労働者も使用者も満足できる働き方が選択できる可能性があります。しかし導入へのハードルは高く、またすべての労働者に向くものではないかもしれません。
導入を検討する際には、どのような形で、どういった範囲の労働者を対象にすれば最も効果的なのかをしっかり見極める必要があります。長時間労働につながることのないよう注意しながら、うまく活用していきましょう。
勤怠管理:過労死ラインとは? 2021.06.23
過労死ラインは、残業時間が・・・
過労死ラインとは、健康に影響を及ぼすリスクが高まるとする時間外労働時間を指す言葉で、労働災害認定で労働と過労死・過労自殺との因果関係判定に用いられる。
具体的にその判断基準は、
発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合、あるいは、発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合をいう。その他、発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる。
そもそも労災保険制度とは?
労働者が業務中にケガ・病気・死亡した場合に、労働者本人やその遺族に対して必要な保険給付をする制度で、その事務は労働基準監督署が実施する。業務災害かどうかの判断基準は、業務遂行性(業務指示があること)と業務起因性(業務と傷病の間に因果関係があること)が前提となります。ただ『過労死ライン』というキーワードでは、そのうち亡くなったケースでなおかつ自殺や脳血管疾患・心臓疾患を原因とすることを国に認めてもらう必要があります。
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について(◆平成13年12月12日基発第1063号).pdf
過労死等防止対策推進法第2条により、過労死等とはこのように定義づけられています。
●業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
●業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
●死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
脳・心臓疾患等の認定基準(過労死ラインの基準)
業務による明らかな過重負担を受けたことにより発症した脳・心臓疾患かどうかであり、具体的な要件は、3つ挙げられており、1つでも該当すれば一応の基準を満たしますが、最終的には総合判断となるので、複数の要件を満たすほど、より労災と認められやすくなります。
1. 異常な出来事に遭遇したこと
発症直前から前日までの間に生じた突発的又は予測困難な異常な事態等
2. 短期間の過重業務に就労したこと
発症に近接した時期(発症前おおむね1週間)において特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせた業務
3. 長期間の過重業務に就労したこと
発症前おおむね6箇月間における著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務
過労死ラインによる評価期間は概ね6カ月とされ、過重負荷の有無の判断につき、労働時間に着目すると、下記の基準で過重負荷の有無が判断されます。
❶ 発症前1カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価される。
❷ 発症前1カ月間におおむね100時間また発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価される。
精神障害の労災認定基準(過労自殺ラインの基準)
業務による心理的負荷について、長時間労働による負荷の度合が「強」となる場合として3通りの視点が想定されています。
長時間労働がある場合の評価方法
発病直前の極めて長い労働時間を評価します。
1.「特別な出来事」としての「極度の長時間労働」
【「強」になる例】
・発病直前の1カ月におおむね160時間以上の時間外労働を行った場合
・発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
2.「出来事」としての長時間労働
発病前の1カ月から3カ月間の長時間労働を出来事として評価します。
【「強」になる例】
・発病直前の連続した2カ月間に、1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
・発病直前の連続した3カ月間に、1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合
3. 他の出来事と関連した長時間労働
出来事が発生した前や後に恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)があった場合、心理的負荷の強度を修正する要素として評価します。
【「強」になる例】
・転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合
成果にフォーカス
少し柔軟な考え方をして、働き方を変えるだけでずいぶんと楽になることもあります。頑張って働き過ぎたり、うつ病になってしまう方には、真面目に考えすぎてしまう傾向があります。
簡単に言えば、会社は従業員に労働時間ではなく成果を求めているのです。成果さえ出せれば、とやかく言われる筋合いはないはずです。どうやれば早く仕事が終わるかを考えてみてください。また、必然的に労働時間が長くなってしまう職場の方でも、1日の中で力を抜ける時間帯があるはずです。うまく力を抜くコツを身につけてください。働き方を柔軟に考えるには、会社がどのような成果を求めているかを考え、それを早く達成するために何ができるかを考えることと、力を抜くところでは力を抜くことです。
大事なことは、長時間労働をせずにワークライフバランスを整えていくことです。
勤怠管理:一時帰休とは? 2021.06.20
一時帰休を日本語そのままに言うと、一時的に休んで帰る。つまり従業員を一時的に休業させることです、あくまで一時的です。理由は様々あると思いますが、一番多いのが会社の業績悪化による事業活動の停止または縮小ではないでしょうか。
ただし、会社側の都合で休業するわけですから、休業中も雇用は継続しています。
労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するため、休業期間中は平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないことになっています。最低、平均賃金の60%でOKです。
休業することにより企業のイメージ悪化も懸念されますが、人件費を抑制しながら雇用を継続できる点があります。優秀な人材を流出させることなく、事態の収拾後には通常の体制に戻せます。また従業員にとっても、休業手当により最低限の保障が得られることはメリットといえます。
一時帰休・一時休業・自宅待機はどれも同じ意味になります。
「一時帰休」は雇用調整における「休業」に該当するため、要件を満たすことが出来れば、従業員に払う休業手当の一部あるいは全部が、『雇用調整助成金』として国からもらえることがあります。一度内容の検討が必要です。
一時帰休中に従業員が年次有給休暇の取得を希望した場合は、どのように対応すべきでしょうか?
年次有給休暇は労働義務がある日に取得できます。そのため、一時帰休のような休業時や休日などの労働義務がない日には、従業員に年休を与える必要はありません。
現在コロナの影響で厳しい業界が多くあるため、一時帰休の対応を余儀なくされている会社が多くございます。早く収束することを願うばかりです。