そもそも管理部門とは、会社内部を管理する部門です。管理部門といっても在り方は会社ごとに変わります。
また管理部門の他に、「バックオフィス」や「間接部門」などと呼ばれています。「バックオフィス」は、管理部門が会社組織を管理する業務である点に照らして、「顧客と顔を合わせることがない業務」という意味で用いられます。「間接部門」は、会社の売上げに間接的に貢献するから「間接部門」とも呼ばれます。
具体的に管理部門とは、人事・総務・法務・経理・経営企画・広報・情報システム・内部統制など企業活動を裏で支える部門で、会社の縁の下の力持ちの印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか。それでは具体的にどのような仕事をしているのかひとつずつ見ていきましょう。
社労士事務所が考える管理部門の業務(仕事内容)は?
1. 人事
2. 総務
3. 法務
4. 経理
5. 経営企画
6. 広報
7. 情報システム
8. 内部統制
この8つの業務について見ていきます。
社労士事務所が考える管理部門の業務 1.人事
人事部門は、企業経営において最も重要な要素である【ヒト=人材】に関する業務を担当します。
具体的には、
(1) 新卒・中途・幹部などの採用活動
(2) 人事異動
(3) 従業員を対象とした教育訓練・スキルアップ研修、ハラスメント防止のマナー研修
(4) 人事システムの構築・見直し
(5) 人事評価制度と賃金制度の構築・見直しなどの賃金労務管理
(6) 勤怠管理・社会保険手続などの給与計算
(7) 健康診断などの安全衛生管理
(8) 福利厚生業務
などがあります。
人事の仕事は、企業にとって大切な経営資源である「ヒト=人材」を最大限活用することです。言いかえると、ヒトの「募集・採用から退職」まで、「従業員に関する業務」を幅広く行っています。そして従業員が能力を発揮できる職場環境を整備して、生産性向上や企業業績拡大に貢献しながら経営基盤のさらなる安定を図ることが役割といえるでしょう。管理や手続業務が多く、裏方業務を担います。ですがヒトに関する仕事のため、経営的な視点が要求されます。
社労士事務所が考える管理部門の業務 2.総務
総務部門は、会社内部の事務や他の部門で担当できない業務全般を担当します。総務は会社内部の「便利屋」とも言えます。
具体的には、
(1) 事務機器・備品の管理・発注
(2) 事務所等の施設管理
(3) 社内文書の管理
(4) 株主総会の企画・運営
(5) 社内行事の企画
(6) 代表電話・来客対応
などがあります。
総務の仕事は他の管理部門と重複する内容が多く、広範囲にわたります。企業によっては人事や労務関連の業務を兼任するケースも少なくありません。管理部門の中でもサポート的な要素が強いのが特徴です。
社労士事務所が考える管理部門の業務 3.法務
法務部門は、企業活動に伴う法律等の事務の取り纏め、法的な問題への対応を業務内容とします。
具体的には、
(1) 企業活動に伴う契約などの締結
(2) 株主総会への対応
(3) 取締役会の企画・運営
(4) コンプライアンス対応・相談窓口設置
(5) 紛争・訴訟対応
などがあります。
法務とは、企業などの組織で法律業務を担います。契約書を作成したり、特許や著作権を管理したり、法律違反しないようトラブルを予防したり、消費者やクライアント企業とのトラブルを仲介したりと、あらゆる法律関係の業務を担当します。近年では「コンプライアンス(法令遵守)」が呼びかけられるようになり、法律・企業倫理を守る意義に注目が集まっています。多くの会社ではコンプライアンスの体制作りが行われており、研修や社内ルールの明文化なども行っています。コンプライアンスの業務を通して社内の秩序を守ることも、法務の大切な仕事といえるでしょう。
社労士事務所が考える管理部門の業務 4.経理・財務
経理・財務部門は、企業のお金の管理に関する業務・決算書の作成を担当します。
具体的には、
(1) 日常の入出金管理
(2) 伝票起票から決算書を作成して帳簿管理・保管
(3) 必要に応じて金融情報収集を行い、資金調達の実施
などがあります。
経理の役割は、「企業活動を数値化した上で管理をして、経営者に情報を提供すること」です。経営者が経営方針・経営計画など企業活動の方向性を決める上で重要な役割を担っています。経営に関わる重要な書類を作成したり、お金の処理をしたり、経理は企業において重要な仕事といえるでしょう。
財務の役割は、「現在・未来のお金」を管理する業務です。企業の経営状況・資金管理などによって仕事内容や緊急度は大きく変化します。例えば、資金不足に陥りそうな企業であれば最優先で、金融機関から融資を受けられるように経営計画・資金計画を作成し、資金確保に動かなければいけません。会社の現状と将来の財務状況をチェックしながら、臨機応変に対応しなければいけない重要なポジションなのです。
社労士事務所が考える管理部門の業務 5.経営企画
経営企画部門は、経営戦略の立案・実施、各種調査・分析、経営会議の運営を担当します。
具体的には、
(1) 長期・中期・短期の予算編成
(2) ビジネスモデルの再構築
(3) M&A対応
(4) 市場調査・競合他社などを基に各種データ分析を実施して経営戦略を立案する
などがあります。
経営企画とは、社長の右腕として経営の企画=舵取りをする業務です。経営方針や経営戦略について社長や役員などの経営幹部に対して提案を行い、それを実行していきます。つまり、会社の未来を左右する仕事といえます。それに伴い責任も重い部署になります。
社労士事務所が考える管理部門の業務 6.広報
広報部門は、企業や行政、各種団体の活動内容や商品などの情報発信を行います。
具体的には、
(1) 社外に対して消費者やマスコミに向けた新製品の情報発信
(2) 社内に対して社内報の作成・交付
(3) 投資家に向けた情報発信
などがあります。
広報の役割は、各ステークホルダーに対してそれぞれ適切な方法でコミュニケーションを取る仕事です。広報活動は会社によって目的が異なり、必要なコミュニケーションも変化します。その上で重要なことは、企業の課題や経営者の目指す姿を理解し会社に寄り添った広報活動を行うことです。
社労士事務所が考える管理部門の業務 7.情報システム
情報システム部門は、企業にとって必要な情報の収集・蓄積・処理・活用に係わる仕組み作りを担当します。
具体的には、
(1) IT戦略の策定
(2) 社内システムの企画立案・構築・運用・保全の実施
(3) 社内に対してITに関するサポート
などがあります。
情報システム部門は、業務にITが多く活用されている現代では必要不可欠な存在です。人事や経理、顧客管理、販売管理など、社内の基幹システムで多く利用されています。企業の経営方針や経営活動に沿ってIT戦略を策定し、システム企画に落とし込むことで、業務の効率化を図り、企業の業績向上に貢献することが役割となります。
社労士事務所が考える管理部門の業務 8.内部統制
内部統制部門は、企業の3つの目的である①企業の有効性と効率性、②財務報告の信頼性、③関係法規の遵守を達成することを合理的に保証することを意図したプロセスです。専門的な言い方のため、分かりにくいかもしれません。企業が事業活動を継続するために、従業員が順守すべきルールや制度を構築・運用・評価できる体制作りを言います。
具体的には、
(1) 組織の整備
(2) 規程・業務マニュアルの整備
(3) 従業員教育システムの構築
(4) 内部統制についての相談先などについて、「実現可能性が担保できるシステム」を作り、「ルール通り確実に運用し、評価・改善できる体制」を整備する
などがあります。
特に業務をする上で、
・ 統制環境
・ リスクの評価と対応
・ 統制活動
・ 情報と伝達
・ モニタリング
・ ITへの対応
の6つの要素が重要であるとされています。
「法律上の要請」としての内部統制が、義務付けられている多くの会社がございます。会社法上の大会社(資本金が5億円以上または、負債合計が200億円以上の会社)と上場会社(有価証券報告書の提出義務のある会社)の2通りがあります。
内部統制報告制度があり、金融商品取引法により、上場企業および関連会社には内部統制報告書を提出することが求められています。企業は毎年度有価証券報告書を提出しますが、その報告書内に虚偽や誤りがないことを外部に報告するための制度として内部統制報告制度は運用されています。つまり、有価証券報告書に含まれる財務報告に関わる内部統制が、企業において構築・機能しているかどうか、企業の経営者自身が評価して報告するものが内部統制報告書です。内部統制報告書は、有価証券報告書に添付し、年に1度、金融庁に提出します。
財務報告における内部統制への評価が求められる内部統制報告書において、業務におけるリスクの把握、またリスクに対する統制(コントロール)を見つけるためツールとして
●フローチャート
●業務記述書
●リスクコントロールマトリックス
が挙げられます。一般的に内部統制の3点セットと呼ばれています。
日々業務効率を改善しながらも、法令を遵守するプロセスを構築するには、各目的の重要度を見比べ、企業の置かれた環境や事業状況に応じて判断を行う必要があります。内部統制の目的を達成する必要性から、企業の経営幹部は、内部統制の基本的要素が漏れなく組み込まれた、理想的なプロセスを整備することを求められます。それぞれの目的を達成できるプロセスが、相互に補完し合い相乗効果を生み出しながらすべての目的を達成する姿が理想的です。
社労士事務所が考える管理部門の業務 : 管理部門に求められている役割とは?
まず管理部門の役割は、会社の規模で異なります。ここでは、大企業・中小企業の管理部門の役割について触れておきます。
● 大企業の管理部門は、フロントオフィスを支えるために専門化・分業化されています。役割は、組織間の連携・効率化・共有資産価値の増大・専門機能の価値向上などがあります。管理部門の設置は、大企業の成長になくてはならない存在です。ですが管理部門の拡大は、直接的な利益とはならない一方で、コスト負担を大きくし利益を圧迫する要因になります。
● 中小企業の管理部門は、大企業と異なりコスト面の制約が大きい傾向があります。そのため、1名~数名で『人事・総務・法務・経理・・・』など対応しなければならないケースが多いです。それでもコスト削減も兼ねて、社長自ら管理部門の業務を担当しているケースも珍しくありません。人員配置が出来ないため、事務的な作業をこなすようになり、日々の業務に忙殺されている現状のようです。役割としては、企業の成長や従業員がより働きやすい職場環境作りを提供するのがポイントですが、本来大企業・中小企業の違いはありません。
一昔前の管理部門は、『固い・保守的・融通が利かない=守り』という印象が強かったと思います。それは大企業も中小企業も同じでした。また間接部門という言葉から「利益を生まない仕事」という考えが長く根付いていました。一昔前の『固い・保守的・融通が利かない=守り』では、決められた約束事を決められた通りにするイメージが強かったため、そのようなものが今も残っているのだと思います。
少子高齢化、低成長時代の現在において、多様化する社会・グローバル化するビジネス・情報通信技術の進展・ソーシャルネットワークの普及・個人の働き方(働き方改革)など、変化の速い時代になっています。年功序列・終身雇用が崩れている現在では、一昔前の仕事のやり方では時代に合わなくなってきました。
それぞれの業務に高い次元での専門性が要求されるようになり、またコンプライアンス・ガバナンスなどの要求も強く・高くなってきています。しかし、従来の定例化している業務はなくなるものではないため、デジタル化などを駆使し業務効率化を図りつつ、コスト削減の達成が新しい役割に加わっております。そして、効率化できた時間で、収益を上げる攻めの提案も出来るようになるのではないでしょうか。管理部門でも、自ら新しい技術やノウハウを積極的に活用して、業務改善を図りつつ利益への貢献が、『守り』のイメージから『攻め』のイメージに変え、企業の発展に貢献できる部門になっていくといえると思います。
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