時事問題:2021年度の最低賃金は? 2021.07.30
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が1時間あたりの賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。
最低賃金は、公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される最低賃金審議会において議論の上、都道府県労働局長が決定しています。具体的には、中央最低賃金審議会から示される引上げ額の目安を参考にしながら、各都道府県の地方最低賃金審議会での地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により決定されます。
最低賃金の決定基準
第3条(最低賃金の原則)
最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。この3原則は、最低賃金の決定に当たっていずれも考慮されるべき重要な要素であって、そのうちの何に重点があり、何はこの次というような順位はつけ難い。3つの観点から総合勘案して最低賃金を決定すべきものである。
2020年度(昨年度)の最低賃金は?
2020年の政府としての考え方
経済財政運営と改革の基本方針2020(令和2年7月17日・閣議決定)
4.「新たな日常」を支える包摂的な社会の実現
(2)所得向上策の推進、格差拡大の防止
② 最低賃金の引上げ
経済の好循環継続の鍵となる賃上げに向け、日本経済全体の生産性の底上げや、取引関係の適正化など、賃上げしやすい環境整備に不断に取り組みつつ、最低賃金については、より早期に全国加重平均1000
円になることを目指すとの方針を堅持する。
他方、感染症による雇用・経済への影響は厳しい状況にあり、今は官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題であることを踏まえ、今年度の最低賃金については、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況を考慮し、検討を進める。
【令和2年度地域別最低賃金額改定の目安について】
本日開催された第57回中央最低賃金審議会で、2020年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられましたので、公表いたします。
【答申のポイント】
令和2年度地域別最低賃金額については、新型コロナウイルス感染症拡大による現下の経済・雇用への影響等を踏まえ、引上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当。
地方最低賃金審議会において、上記見解を十分に参酌しつつ、地域の経済・雇用の実態を見極め、地域間格差の縮小を求める意見も勘案しつつ、適切な審議が行われることを希望。来年度の審議においては、新型コロナウイルス感染症等による様々な影響を踏まえながら、経済の好循環継続の鍵となる賃上げに向け、日本経済全体の生産性の底上げや、取引関係の適正化など、賃上げしやすい環境整備に不断に取り組みつつ、最低賃金については更なる引上げを目指すことが社会的に求められていることも踏まえ、議論を行うことが適当。
1円以上の有額の目安を示さなかったのは、平成21年度以来であり、目安が時間額に統一された平成14年度以降5回目となります。
2020年7月22日厚生労働省より公表
2021年度(今年度)の最低賃金は?
2021年の政府としての考え方
経済財政運営と改革の基本方針2021 (令和3年6月18日閣議決定) 第2章 次なる時代をリードする新たな成長の源泉~4つの原動力と基盤づくり~
3.日本全体を元気にする活力ある地方創り~新たな地方創生の展開と分散型国づくり~
(3)賃上げを通じた経済の底上げ
民需主導で早期の経済回復を図るため、賃上げの原資となる企業の付加価値創出力の強化、雇用増や賃上げなど所得拡大を促す税制措置等により、賃上げの流れの継続に取り組む。我が国の労働分配率は長年にわたり低下傾向にあり、更に感染症の影響で賃金格差が広がる中で、格差是正には最低賃金の引上げが不可欠である。感染症の影響を受けて厳しい業況の企業に配慮しつつ、雇用維持との両立を図りながら賃上げしやすい環境を整備するため、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組みつつ、最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1,000
円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む。
【令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について】
~ 目安はA~Dランク全てにおいて 28 円 ~
本日開催された第61回中央最低賃金審議会(会長:藤村博之法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授)で、今年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられましたので、公表いたします。
【答申のポイント】
(ランク注ごとの目安)
各都道府県の引上げ額の目安については、A~Dランク全てにおいて 28 円。
注.都道府県の経済実態に応じ、全都道府県をABCDの4ランクに分けて、引上げ額の目安を提示している。現在、Aランクで6都府県、Bランクで 11 府県、Cランクで 14 道県、Dランクで16 県となっている。(参考参照)
この答申は、今年の6月22日に開催された第60回中央最低賃金審議会で、厚生労働大臣から今年度の目安についての諮問を受け、同日に「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会」を設置し、5回にわたる審議を重ねて取りまとめた「目安に関する公益委員見解」等を、地方最低賃金審議会にお示しするものです。
今後は、各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議の上、答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなります。
今年度の目安が示した引上げ額の全国加重平均は 28 円となり、昭和 53 年度に目安制度が始まって以降で最高額となります。また、引上げ率に換算すると
3.1%となっています。
2021年7月16日厚生労働省より公表
これで最終決定ではありません。これから各地域にて個別の事情を考慮しながら判断されます。
時事問題:給与のデジタル払い 2021.06.28
給与のデジタル払いとは
政府は、2021年の春に『給与のデジタル払い(デジタルペイロール)』を解禁する方針を発表しました。発表しただけで実施はまだ実現していません。
給与のデジタル払いとは、企業が銀行口座を通さず、スマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用して振り込むことができる制度のことです。
いまの給与の扱いは?
給与払いの方法については、労働基準法24条1項で
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない
と規定されています。
さらに同条2項では、
毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない
と定められています。
この24条をまとめたものが、『賃金払い5原則』です。
実際には、ほとんどの企業が現金を直接渡すのではなく、銀行振込によって給与を支払っていますが、これは労働基準法施行規則に定められた運用に過ぎません。つまり原則ではなく例外扱いで行っています。そのうえで、給与のデジタル払いの扱いが出来るようにするためには、この施行規則を改正することで実施が可能になります。
給与のデジタル払いの背景・理由
① 外国人労働者の受け入れ拡充
② 「行政・社会のデジタル化推進」を通じて、日本のキャッシュレス化を加速
③ キャッシュレス決済の推進、およびフィンテックを活用した金融サービス・国際競争力の強化
④ 「新たな生活様式」に対応した規制改革の推進
給与のデジタル払いによる企業・従業員のメリット
① 従業員への福利厚生の一環
② 銀行口座を持たない従業員(特に外国人労働者)へデジタル払いでの給与支払いが可能
③ 銀行コストの削減
④ 企業イメージの向上
給与のデジタル払いによる企業・従業員のデメリット
① デジタル払いと通常の賃金払いの二重運用が発生
② 個人情報を担保する方法が困難
③ デジタル払いのためのシステム連携費用や業務工数の増大
給与のデジタル払い導入に伴う課題
検討会においてリスクや懸念が挙がっている
● 資金移動業者の経営安定性や換金性の担保、セキュリティ面の不安
● 個人情報保護や従業員に対する不利益の観点
現在のデジタル化の流れはますます加速するでしょう。従って、給与のデジタル払いについても、そう遠くない時期に実施に踏み込むことになると思います。しかし、いまある重い課題が解消するまでは少し時間がかかりそうです。
時事問題:20年ぶりの労災認定基準見直しへ 2021.06.23
厚生労働省が専門検討会へ「過労死ライン」などの認定基準案を6月22日に示した
現在国が過労死を認定する基準について、残業時間が、
①病気の発症直前1か月に100時間、
②発症前の2か月から6か月は1か月平均で80時間
のどちらか超えた場合などとしている。
長時間労働などが原因の過労死の認定基準について、厚労省の検討会は残業時間が1か月平均で80時間を超えるなど「過労死ライン」に達しない場合でも、それに近い残業があり、不規則な勤務などが認められれば認定すべきだとする見直しの案を示しました。
それによると、残業時間の長さが「過労死ライン」に達しない場合でも、それに近い残業があり、不規則な勤務などが認められれば「仕事と病気の発症との関連性が強いと評価できる」として、労災と認定すべきだとしています。不規則な勤務の具体的な内容は、
●仕事の終了から次の開始までの「勤務間インターバル」が短い場合、
●休日のない連続勤務などを示しています。
「過労死ライン」については、遺族や弁護士からは、WHO=世界保健機関などの指摘を踏まえ、1か月65時間に見直すべきだという意見が出ていましたが、現在の基準を引き続き示すことが妥当だとしています。
勤怠管理:過労死ラインとは? 2021.06.23
過労死ラインは、残業時間が・・・
過労死ラインとは、健康に影響を及ぼすリスクが高まるとする時間外労働時間を指す言葉で、労働災害認定で労働と過労死・過労自殺との因果関係判定に用いられる。
具体的にその判断基準は、
発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合、あるいは、発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合をいう。その他、発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる。
そもそも労災保険制度とは?
労働者が業務中にケガ・病気・死亡した場合に、労働者本人やその遺族に対して必要な保険給付をする制度で、その事務は労働基準監督署が実施する。業務災害かどうかの判断基準は、業務遂行性(業務指示があること)と業務起因性(業務と傷病の間に因果関係があること)が前提となります。ただ『過労死ライン』というキーワードでは、そのうち亡くなったケースでなおかつ自殺や脳血管疾患・心臓疾患を原因とすることを国に認めてもらう必要があります。
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について(◆平成13年12月12日基発第1063号).pdf
過労死等防止対策推進法第2条により、過労死等とはこのように定義づけられています。
●業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
●業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
●死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
脳・心臓疾患等の認定基準(過労死ラインの基準)
業務による明らかな過重負担を受けたことにより発症した脳・心臓疾患かどうかであり、具体的な要件は、3つ挙げられており、1つでも該当すれば一応の基準を満たしますが、最終的には総合判断となるので、複数の要件を満たすほど、より労災と認められやすくなります。
1. 異常な出来事に遭遇したこと
発症直前から前日までの間に生じた突発的又は予測困難な異常な事態等
2. 短期間の過重業務に就労したこと
発症に近接した時期(発症前おおむね1週間)において特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせた業務
3. 長期間の過重業務に就労したこと
発症前おおむね6箇月間における著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務
過労死ラインによる評価期間は概ね6カ月とされ、過重負荷の有無の判断につき、労働時間に着目すると、下記の基準で過重負荷の有無が判断されます。
❶ 発症前1カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価される。
❷ 発症前1カ月間におおむね100時間また発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価される。
精神障害の労災認定基準(過労自殺ラインの基準)
業務による心理的負荷について、長時間労働による負荷の度合が「強」となる場合として3通りの視点が想定されています。
長時間労働がある場合の評価方法
発病直前の極めて長い労働時間を評価します。
1.「特別な出来事」としての「極度の長時間労働」
【「強」になる例】
・発病直前の1カ月におおむね160時間以上の時間外労働を行った場合
・発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
2.「出来事」としての長時間労働
発病前の1カ月から3カ月間の長時間労働を出来事として評価します。
【「強」になる例】
・発病直前の連続した2カ月間に、1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
・発病直前の連続した3カ月間に、1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合
3. 他の出来事と関連した長時間労働
出来事が発生した前や後に恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)があった場合、心理的負荷の強度を修正する要素として評価します。
【「強」になる例】
・転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合
成果にフォーカス
少し柔軟な考え方をして、働き方を変えるだけでずいぶんと楽になることもあります。頑張って働き過ぎたり、うつ病になってしまう方には、真面目に考えすぎてしまう傾向があります。
簡単に言えば、会社は従業員に労働時間ではなく成果を求めているのです。成果さえ出せれば、とやかく言われる筋合いはないはずです。どうやれば早く仕事が終わるかを考えてみてください。また、必然的に労働時間が長くなってしまう職場の方でも、1日の中で力を抜ける時間帯があるはずです。うまく力を抜くコツを身につけてください。働き方を柔軟に考えるには、会社がどのような成果を求めているかを考え、それを早く達成するために何ができるかを考えることと、力を抜くところでは力を抜くことです。
大事なことは、長時間労働をせずにワークライフバランスを整えていくことです。