社会保険労務士とは・・・

社会保険労務士(社労士)とは、社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。

企業の発展には、人(人材)、モノ、金が必要とされておりますが、社会保険労務士はその中でも人(人材)に関する専門家であり、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的として、業務を行っております。

社会保険労務士は、企業における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」「年金の相談」に応じるなど、業務の内容は広範囲にわたります。

具体的には、50種類以上にのぼる労働・社会保険諸法令に基づいて、行政機関に提出する提出書類や申請書等を依頼者に代わって作成する事務及び提出代行または事務代理(注)をはじめ、備え付け帳簿、書類等の作成などの仕事を行っています。また、社会保険労務士は、人事・労務管理コンサルタントとしても活躍しています。

注)「代行」とは、社会保険労務士の職印を捺印して依頼主に代わって申請書等の提出手続きを行うことをいい、また「代理」とは、関係諸法令に定められた事務について、委任状によって依頼者に代わって申請等を行う行為をいいます。


社会保険労務士は、会社の設立から解散までを事業主などに代わって行うこと、そして従業員の採用から退職(解雇)までの間に必要な労働・社会保険の諸手続きのすべてを事業主に代わって行います。また、年金裁定請求手続きや労災保険の給付申請手続きなどの事務を個人に代わって行います。

 <主な仕事>

●労働保険、社会保険の新規加入と脱退および被保険者資格の取得・喪失等の手続き
●健康保険・厚生年金保険の算定基礎届けおよび月額変更届け
●労働保険の年度更新手続き
●健康保険の傷病手当金や出産手当金などの給付申請手続き
●労災保険の休業(補償)給付や第三者行為の給付手続き
●死傷病報告等の各種報告書の作成と手続き
●解雇予告除外認定申請手続き
●年金裁定請求手続き
●審査請求、異議申立、再審査請求などの申請手続き
●各種助成金申請手続き
●労働者派遣事業などの許可申請手続き
●求人申込みの事務代理


 <規定>
常時10人以上の従業員を使用する事業所では、就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。そして人数に関係なく会社の業務を行っていく上で、ルール(規則)も必要になってきています。近年、関係法令が頻繁に改正されていますので、すでに就業規則を作成している事業所でもその見直しが必要となっています。
就業規則をまだ作成していない事業所はもちろん、改正された法令通りに変更していない事業所は、ぜひ社会保険労務士に相談してください。社会保険労務士は事業所の実態と法令に合った就業規則を作成・変更します。

●就業規則
●給与(賃金)規程
●退職金規程
●安全衛生規程
●災害補償規程
●福利厚生(慶弔見舞金)規程
●育児・介護休業規程
●出向規程
●旅費規程
●寮・社宅管理規程  など

 <帳簿>
労働関係法令は、上記の諸規定のほか、労働者名簿や賃金台帳、各種労使協定などの書類、帳簿等を事業所に備え付けておくことを事業所に義務づけています。このうち、労使協定には次のようなものがありますが、社会保険労務士は、これらの労使協定の事務手続き(届出を含む)を代行します。

●労働者名簿
●賃金台帳
●36協定(時間外・休日労働協定)
●休憩時間の一斉付与除外協定
●1年単位の変形労働時間制の労使協定
●フレックスタイム制の労使協定
●貯蓄金管理に関する労使協定
●賃金控除に関する労使協定
●事業場外みなし労働時間制に関する労使協定
●専門業務型裁量労働制に関する労使協定
●企画業務型裁量労働制の労使委員会の決議等
●年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定
●育児休業の適用除外に関する労使協定
●介護休業の適用除外に関する労使協定  など


2005年(平成17年)の社会保険労務士法改正により、紛争解決手続代理業務(あっせん代理業務)が追加されました。

1.社会保険労務士業務に次の業務が追加
①雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第14条第1項の調停の手続きにおける紛争当事者の代理
②都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争に関するあっせんの手続きにおける紛争当事者の代理
③個別労働関係紛争(紛争目的価額120万円以下のものに限る)に関する民間紛争解決手続で、厚生労働大臣が指定するもの(民間の紛争解決事業者)が行うものにおける紛争事業者の代理

2.個別労働関係紛争の解決促進に関する法律(ADR法)第6条第1項の紛争調整委員会における同法第5条第1項のあっせん手続きの代理

※上記1.及び2.の業務(紛争解決手続代理業務)は、厚生労働省が全国社会保険労務士会連合会に委託し、実施する紛争解決手続代理業務試験に合格し、且つ、その旨の付記を受けた社会保険労務士(特定社会保険労務士)に限り、行うことが出来ます。


 <主な仕事>

賃金・人事制度および退職金制度の設計・運用、採用・異動・退職・解雇等の雇用管理、労働時間管理(休日・休暇を含む)、福利厚生、安全衛生、教育訓練、各種年金、高齢者問題などに関する相談を行い、人事労務コンサルタントとして企業を支援。

◆ 法律で認められた唯一の労務管理コンサルタント

社会保険労務士法は、「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること」(同法第2条第1項第3)を社会保険労務士の仕事のひとつとして定めており、社会保険労務士が労務管理の専門コンサルタントであることを認めています。

 <労務管理コンサルタントとして行う仕事の主なもの>
職場における労働問題は、非常に多岐にわたるため、すべての領域を記すことはできませんが、主なものには次のようなものがあります。

雇用管理
就業管理
人事管理
賃金管理
福利厚生
安全衛生
教育訓練
労使関係


社労士とは、社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。ではその社会保険労務士法に業務の扱いはどのように書かれているのでしょうか。

社会保険労務士法第2条第1項第1号から第3号に業務の扱いが書かれています。

第1号の1
別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。

第1号の2
申請書等について、その提出に関する手続を代わってすること。

第1号の3
労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る。以下この号において「申請等」という。)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)について、代理すること(第25条の2第1項において「事務代理」という。)。

第1号の4 ・・・ 第1号の6 (省略) 

第2号
労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含み、申請書等を除く。)を作成すること。

第3号
事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。

このように書かれています。条文をそのまま書きましたので読みづらいかもしれません。社会保険労務士法第2条第1項第1号から第3号に定められる業務(省略しましたが第1号の4~第1号の6は個別労働関係紛争に関する業務は特定社会保険労務士に限る)です。そのため、1号業務、2号業務、3号業務と呼ばれることが多いです。

1. 1号業務 (独占業務)

経営者に代わって、労働社会保険諸法令に基づいて申請書等を作成し、行政機関へ提出代行を行い、また行政機関等の調査に際し、または処分に関して、主張若しくは陳述を行うことです。具体的には、従業員の雇用保険・労災保険・社会保険に関する被保険者資格の取得・喪失などの申請・届出や労働保険年度更新、社会保険算定基礎届などの労働・社会保険関連法にもとづく申請書作成・手続き代行業務です。これらの代行業務は社労士にしか許されていない独占業務です。

もちろん、経営者や従業員自らがこれらの業務を担当するのは可能ですが、複雑で手間がかかる業務であるのも事実で、社労士に依頼することで業務効率化が実現できます。

2. 2号業務 (独占業務)

労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類を作成することです。つまり、労働基準法で整備・管理・保管が義務付けられている「法定帳簿書類の作成業務」も、社労士のみが代行できる独占業務です。「労働者名簿」・「賃金台帳」・「出勤簿」が法定三帳簿と言われている書類になります。

3. 3号業務

事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。言いかえれば、労務管理、社会保険について相談に応じてアドバイスをすることです。

労働関連法に精通した社労士ならではの業務が人事・労務コンサルタントです。具体的には、人事労務関連の相談・指導、賃金・評価制度の構築、人材教育のカリキュラム構築、職場環境の整備などが一例として挙げられます。人事・労務に関する知識・経験が豊富な社労士ならではのノウハウを活かせる分野でしょう。