労務管理を担当する部門にとって、働き方改革は注目すべきトピックスです。対応に追われている労務管理の担当部門も少なくありません。
では、働き方改革と労務管理はどのように関連し、どんな対応を求められているのでしょうか。今回は、労務管理を見直す重要性や社会情勢、助成金制度を最大限活用した労務管理を行うための相談先などについてご紹介します。
目次
【多摩地区】労務管理をする上で知っておきたい働き方改革
働き方改革がスタートしてから、多くの企業の労務管理の担当部門で、就業規則の変更といった対応を取っていることでしょう。働き方改革は複数の労働関連法を整備したものであるため、どこが変わったのか、労務管理にどう影響するのかがわかりにくい面があります。
ここでは、働き方改革が目指している社会とその必要性、労務管理に携わる人が知っておくべき働き方改革への対応の注意点について解説します。
【多摩地区】労務管理と働き方改革
2019年に施行された働き方改革関連法、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」は、労務管理に大きな影響を与える一連の法改正を指します。働き方改革は、どのような目的で制定されたのでしょうか。
「一億総活躍社会」を実現するための改革
日本の人口は、2005年から死亡数が出生数を上回るようになり、2010年10月1日の総人口1億2,806万人をピークとして減少に転じています。
内閣府によれば、2048年に日本の人口は1億人を割り、その後も急速な減少を続け、2060年には8,674万人まで減少、2110年には現在の半分以下の4,286万人に落ち込む見込みが報告されています。
特に2060年の総人口8,674人のうち生産年齢人口は4,418万人であり、人口のほぼ半数が生産年齢ではない状態が訪れます。
これを踏まえて、働き方改革では、50年後も人口1億人を維持し、皆が活躍しながら社会を維持することを目的にしています。
働き方改革の基本的な考え方
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
そのため、働き方改革の基本的な考え方は、日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。
働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。
そのため、ワークライフバランスを確保するために、働き方改革には次の3つの柱が設けられております。
- 総合的かつ継続的な推進
- 長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現
- 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
より具体的に実務的な労務管理に影響が大きい内容を紹介すると、時間外労働の上限設定と使用者による年次有給休暇取得の義務化、同一労働同一賃金、勤務間インターバル制度などが挙げられます。
さらに、リモートワークや短時間勤務制度、フレックスタイム制度などの多様な働き方を導入することで、その働き方を自分で「選択」出来るようになれば、育児・介護と仕事などを両立しやすい環境が出来るようになります。
【多摩地区】労務管理に求められること
働き方改革が施行されたことで、労務管理で注意しなければならない項目が多くあります。
時間外労働の上限設定
労働基準法第36条により、企業は時間外労働や休日労働などを従業員にさせる場合、労働組合などと「時間外・休日労働に関する協定」を結び、労働基準監督署に届け出なければなりません。
今までは時間外労働の限度時間を告示すれば実質上限はなかったのですが、今回の働き方改革関連法では、時間外労働の上限が罰則付きで設けられました。
時間外労働の上限
- 1カ月の時間外労働 … 45時間(原則)
- 1年間の時間外労働 … 360時間(原則)
- 時間外労働 … 年720時間以内(例外)
- 時間外労働+休日労働 … 月100時間未満(例外)
- 時間外労働+休日労働について、全ての月で1か月当たり80時間以内(例外)
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度(例外)
労働時間で違反すると法律違反になりますので、労働基準監督署から是正勧告を受ける要因になります。受けた是正勧告を無視すれば罰則や悪質な場合には逮捕されることもあり得るので注意が必要です。
そのため労働時間の管理は重要になります。
使用者による年次有給休暇取得の義務化
年次有給休暇は、働く方の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則、労働者が請求する時季に与えることとされています。
しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、有給休暇の取得率が50%を上回っている程度で、国が目標としている70%とは乖離が大きく、取得率が低調な現状にあるため、年次有給休暇の取得促進が課題となっていました。
そこで、年次有給休暇取得促進として、5日を目途に強制的に取得させるようになりました。
使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内の5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。この場合には、就業規則への記載も必須となります。
勤務間インターバル制度
働き方改革関連法によって改正された労働基準法においては、時間外労働の上限(1か月及び1年の時間外労働の限度時間数が規定)規制が導入されました。
一方、企業における労働時間の状況については、必要に応じて変形労働時間制をはじめ、フレックスタイム制、裁量労働制などの弾力的な労働時間制度を採用しながら、企業の実態に即した労働時間制度が導入されております。
各社、業務の繁忙期などにより、特定の時期に労働時間が集中する場合や、夜勤、交替制勤務といった勤務体系において、勤務間隔が短い場合など、終業時刻から次の始業時刻までの間に十分な休息時間を取ることが出来ない場合もあり得るでしょう。
労働者の終業時刻から次の始業時刻の間に一定時間の休息が必要な理由として、『睡眠と心身の健康状況』についての研究結果がございます。
それによると、1日の睡眠時間が6時間未満の者では、7時間の者と比べて、居眠り運転の頻度が高いことや、交通事故を起こした運転者では、睡眠時間が6時間未満の場合に追突事故や自損事故の頻度が高いことが示されている。
また、睡眠時間を1日当たり約5.8時間に制限すると、制限せずに約8.6時間眠らせた場合に比べて眠気が増し、注意力が低下することが示されている。
『労働時間と健康』では長時間労働が、心血管疾患の発症リスク、精神疾患の発症リスク、週50時間以上の長時間労働はメンタルヘルスを顕著に悪化させるなどの調査が報告されている。
「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るもので、2019年4月から、制度の導入が努力義務化されました。
同一労働同一賃金
2021年4月以降すべての企業で、同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当、福利厚生などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されました。
正社員と、①職務内容(業務の内容+責任の程度)、②職務内容・配置の変更範囲(転勤、人事異動、昇進などの有無や範囲)、③その他の事情の違いに応じた範囲内で、待遇を決定する必要があります。
今まで就業規則に定めている基本給などは、正社員と契約社員、パート社員で異なる場合が多いですが、今後は待遇等を検討した上で、同じ待遇であれば同一労働同一賃金としなければなりません。
また、そうなると、社会保険の取り扱いや労働保険料の算出も変わる可能性が出てくるので、内容を確認しながら正確に行う必要があります。
【多摩地区】労務管理の基礎知識「快適な職場環境のためのポイント」
働き方改革は、労働環境を整備して快適な職場環境を作ることで、働きながら子育てが出来るように、より多くの働き手・労働者をサポートするための労働関連法の改正です。
労務管理を見直しながら職場環境を整えることは、長時間労働を抑制しつつ生産性を向上させることで、人材確保も容易になり、企業の安定した経営が可能になるのです。
ここでは、労務管理を見直す必要性と、今後の労務管理の変化について解説いたします。
【多摩地区】労務管理を見直す重要性
労務管理を担当する部門では、働き方改革が施行されたことにより、労務管理の在り方の見直しを迫られています。労務管理を見直さないとどうなるのでしょうか。
労務管理を見直さないとどうなる?
働き方改革が施行されているにもかかわらず、就業規則の改定など労務管理の中身を見直さないと、企業は様々な損失を被ります。
例えば、働き方改革によって時間外労働の上限が設けられました。その時間外労働の上限を超えてしまうと法違反となり、罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となりました。
時間外労働の上限を超えた時点で法違反となることから、労働基準監督署から調査が入り「是正勧告」を受けるリスクが高まります。労働基準監督署の調査自体でも企業として大きな負担です。
他の企業が働き方改革のより職場環境の整備を進めている中で、いつまでも旧態依然の労務管理を続けていると就職希望者が職場環境のよい企業に流れてしまい、優秀な人材の損失にもなるでしょう。
場合によっては従業員の退職者も出てしまうかもしれません。
中小企業だから働き方改革は関係ない?
働き方改革では、中小企業に対し猶予期間を設けていました。ここでいう中小企業とは、例えば、業種が製造業、建設業、運輸業、その他であれば、資本金の額が3億円以下、または従業員数が300人以下の企業を指します。
中小企業だから免除されているのではなく、準備に必要な時間を想定して猶予期間を設けているだけですので、その点は注意しなければなりません。
法改正の対応をせず放置していれば、労働基準監督署から調査が入り「是正勧告」を受けるリスクが高まります。そもそもその前に法違反の状態なので、企業として改善対応をしないといけないでしょう。
働き方改革はすでに施行されているので、時間外労働の上限設定や使用者による年次有給休暇取得の義務化、勤務間インターバル制度、同一労働同一賃金、就業規則の改定や、時間外労働の削減対応、有給休暇の取得についても対応の検討などを速やかに進めていきましょう。
そうすると労働保険料について今後金額が大きく変わる可能性があるので、押さえておきたいポイントになります。
【多摩地区】今後の労務管理の変化
労務管理を行う上では、働き方改革以外にも幅広い目配りが必要です。労務管理を担当する部門の負担を減らすと同時に、適切な労務管理を行うことができる相談先をご紹介します。
労働関連法や社会保険法の変革に対応
働き方改革は、現在進行形で進んでいることはもちろんですが、労働関連法や社会保険法の法改正は頻繁に行われています。
そのため実務の細かな運用の変更に至っては日常茶飯事と言えるのではないでしょうか。多摩地区の企業労務管理を担当する部門でも、その都度、労務管理のソフトウェアを更新して手続き上の変更に対応するだけでなく、法改正の最新の情報を基に社内処理を正しく対応しなければなりません。
しかし、多摩地区の企業労務管理の担当者が、必ずしも社会保険労務士のような労働関連法などの専門家とは限りません。各行政機関の手続、給与計算、社会保険料、労働保険料の計算などが大きな負担となっている可能性もあるでしょう。
労働関連法や社会保険法の変革に対応するためには、社会保険労務士がいる外部機関にアウトソーシングすれば迅速・正確に対応できる上、多摩地区の企業労務管理を担当する部門への負担が軽減されます。
社会情勢に応じた対応が可能
2019年に働き方改革が施行されて間もない2020年、新型コロナウイルス感染症が蔓延したことにより、働き方改革の多様で柔軟な働き方のひとつである「在宅勤務・テレワーク」は一気に浸透しました。
政府からの要請もあり、緊急措置として「在宅勤務・テレワーク」を進めたという企業は少なくありません。緊急措置として始めた「在宅勤務・テレワーク」ですが、課題も見えてきたのではないでしょうか。
また、働き方改革に関連する取り組みに対して国や東京都、多摩地区の市町村では業務改善助成金や働き方改革推進支援金などといった補助金や助成金を創設しています。
多摩地区の労務管理を専門に行う社会保険労務士などに相談することで、細かな法改正や社会情勢に応じた、より効果的な労務管理が出来るようになり、給与計算、社会保険料、労働保険料の計算にもつながるのではないでしょうか。
労務管理は多摩地区の社会保険労務士に相談しよう
働き方改革の施行により、多摩地区の中小企業の労務管理を行う部門にも、労務管理の変革が迫られています。
働き方改革の施行により、時間外労働の上限設定、使用者による年次有給休暇取得の義務化、同一労働同一賃金、これらに伴う勤怠管理、給与計算、社会保険料、労働保険料など対応しなければならないことが山積みになっています。
この法対応を怠ると労働基準監督署から是正勧告を受けるリスクが高まります。そうならないためには、時間外労働や有給休暇の適切な管理が必要であることは言うまでもありませんが、法律に則った就業規則の見直し、給与計算、社会保険料、労働保険料などの労務管理の体制再構築を検討して見ませんか。
労働基準監督署から是正勧告を受けないだけではなく、よりよい職場環境への労務管理を行うためにも、社会保険労務士など労働関連法の専門家に相談してみるとよいでしょう。
TS人事労務オフィスは、多摩地区での労務管理の相談にもきめ細かく対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
時間外労働の上限設定、使用者による年次有給休暇取得の義務化、同一労働同一賃金、これらに伴う勤怠管理、給与計算、社会保険料、労働保険料などのキーワードがわからなかったり、疑問に感じたことは、ご質問いただければわかりやすくお答えいたします。
TS人事労務オフィスがご紹介する「労務管理コラム」
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